東京感動線

“森の案内人”と見つける
東京にひそむ森の息吹
021

この記事をシェア

お気に入りに追加する

東京感動線 ☓ TABICA

森の案内人三浦 豊さん
三浦 豊さん
交流

MOVIE

見かたを変えると、
見えてくるものがある

Scroll

東京感動線と体験予約サイト「TABICA」がコラボレーションし、東京の森を体感するツアーが開催された。ガイドは“森の案内人”として活躍する三浦豊さん。
三浦さんは大学で建築を学んだ後に庭師となり、2004年から全国3000箇所以上の森を歩き続けているという。
そんな三浦さんと行く小さな旅は、大都会・東京に宿る自然への気付きを与えてくれる。

アスファルトの隙間の緑に着目する

ツアーの集合場所は多くの人が行き交うJR原宿駅。
ここから代々木公園を散策し、代々木八幡宮まで歩いて行く。
参加者の自己紹介を終えたところで、三浦さんは早々に歩道脇のアスファルトの隙間から生える草について語りはじめた。

「僕が森を好きになったきっかけは、アスファルトの間から芽吹く緑だったんです。大学で建築を勉強していて、都市空間を感じようと街を歩き回っていた時期でした。ふと道端に目を落とすと、草が生えている。それまで桜と向日葵しか知らないくらい自然に興味がなかったんですが、妙に気になりだして、緑の状況をスキャニングするようになったんですね。アスファルトがひび割れると、その隙間に種が落ち、草が生えます。アスファルトやブロックの下は水が蒸発しませんから、根っこが広がっていく。すると隣の植物とくっつき、群落になるんです。やがて木が生え、大きくなり、落ち葉が溜まると、微生物や菌類がやってきて土ができますよね。土が肥沃になるにつれ、木はボリュームアップし、そして森になります。その昔、東京はすべてが森でした。そこに回帰しようとする草木の力強さを思うと、とてもテンションが上がりました」

原宿駅から代々木公園・原宿門へ向かう短い距離の中でも、三浦さんはさまざまな木について説明をしてくれる。

「ケヤキ、桜、ムクノキ、エノキ、タブノキなどは、もともと東京で自生していた木。街中で見かけるのも、自然に生えている木が多いと思います。自生と植樹を見分けるポイントは、ふてぶてしさ。自生した木の方が、図太い感じがするんですよね(笑)」

代々木公園でたくさんの木々に出合う

「都心部にありながら、とても広い。みんながのびのび過ごしていて、いい公園だと思います」

バトミントンを楽しんだり、昼寝をしたり、都会のど真ん中とは思えないほど、代々木公園にはゆったりした時間が流れている。
心地よい風が木々の間を吹き抜けると、三浦さんはそっとつぶやく。

「いい音ですね。これはクスノキの葉音です。あのケヤキも生命力がみなぎっていますよね。枝ぶりがピンとしている」

三浦さんと歩いていると、1本1本の木そのものの生き方について、考えさせられる。

「木は生き物なんですよ。自ら動くことができないけれど、DNAの40%が僕ら人間と同じだってご存知でした? でもね、木は動けないんじゃなくて、動く必要がないんです。木からすると『人間はいつも動き回って、それでお腹がすいちゃって、エネルギー効率が悪いね』って感じかもしれません。季節を通じて、特定の木に出合うのもおもしろいと思いますよ」

木は植樹か自生かによって、背景が変わるのだとか。

「人が植えたのであれば人の思いが、自然に生えたのなら、どんな森になろうとしているのかが見えてきます。公園は人間の運動を第一に考えてつくられているので、森の視点で捉える時は“木の都合”や“木の立場”をぜひ意識してみてください。日当たりのよい場所に立っているから元気なんだな、こんなところから芽生えようとしているんだな、とかね」

三浦さんは“いい木”に出合うと、両手をいっぱいに広げて木と向き合う。
まるで木と共鳴し合っているようだ。

「木と向き合っていると、すごく元気になるんです。いい映画を見終わった後のような気分っていうのかな」

代々木公園内にある「国土緑化運動の碑」や「閲兵式の松」、中央広場の河津桜、ドッグラン近くのヒマラヤスギを眺め、神宮橋門へ。
ここから最終目的地、代々木八幡宮へと向かう。

縄文時代の森を感じられる代々木八幡宮

代々木八幡宮は緑豊かな鎮守の杜だ。
応神天皇を祀り、1212年に創建。ご祭神の八幡さまは、朝廷、武家からの崇敬を集め、国家鎮護、破邪顕正の神として仰がれてきた。
1950年には縄文時代の土器や石器が発掘され、研究によると縄文期から人が暮らしを営んできた場所だったという。
境内には復元された竪穴式住居や出土品陳列館もあり、渋谷区の史跡としても指定されている。

「草木の息吹が非常に強く、もともと東京にあった森を感じられる場所です。竪穴式住居の周辺では、自生するタブノキや棕櫚の木も見られますよ」

東京に残る森の魅力について、あらためて三浦さんにうかがってみる。

「森を拡大解釈すると、アスファルトの間から芽吹いているのも“森”なんですよ。そんな小さな緑から想いを馳せる。想像力を駆使してみると、東京にはさまざま場所に、いろんな森があるんです。東京って、自然が身近ではないからこそ、木を大切にしている街だと思うんですね。『人間が自然を搾取している』といわれがちですが、僕は『同じ生きもの同士、一緒に盛り上げていきましょう』と考えています。東京の人たちのエネルギーによって、木や植物は興奮し、もっともっと木々は茂っていくはず。いま以上に楽しいことになるんじゃないかなって、個人的にはワクワクしているんです。僕にとって森は、もっとも素晴らしく、尊く、贅沢な存在。それをみなさんと共有していけたらうれしいなと。東京の森を、ぜひ楽しんでください」

東京感動線/TOKYO MOVING ROUND×TABICA
山手線の暮らしを旅しよう
https://tabica.jp/entry/feature/tokyomovinground/

森の案内人 
三浦 豊さん

三浦 豊さん

1977年京都府生まれ。日本大学芸術学部卒業後、造園業勤務を経て、2004年より全国の森を巡る旅を始める。2010年より、全国の森を案内する「森の案内人」として活動を開始。著書に「木のみかた 街を歩こう、森へ行こう」(ミシマ社)。公式サイト「森の案内人 三浦豊」

https://www.niwatomori.com/

この記事をシェア

お気に入りに追加する

見かたを変えると、
見えてくるものがある

CLOSE MOVIE