東京感動線

“食のセンス”が光る
自然食レストラン
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モミノキ ハウス

MOMINOKI HOUSE
オーナーシェフ
山田 英知郎さん
山田 英知郎さん
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自然が育んだ命が体と心を健康にする

「自然栽培で育てたものには力がある。だからおいしい。食べ物は“もの”じゃなくてエネルギーなんですよね。私たちは、命を食べて体と心をリチャージしているんです」

自然栽培で育った色とりどりの野菜を盛り付けた
プレート+玄米ごはん+味噌汁の「自然食set」を前にそう話しはじめたのは、
原宿で43年間続く自然食レストラン「MOMINOKI HOUSE」のオーナーシェフ山田 英知郎さん。
同店の料理のベースとなっているのはマクロビオティック(玄米菜食)。
メニューには、自然栽培で栽培されたものを中心に、食材の持ち味を最大限に引き出した料理が並ぶ。

【写真】「自然食set(玄米・味噌汁・野菜)」1,250円

祖父、父ともに和食の料理人という山田さんは高校卒業後、フランス料理の世界へ進んだ。
日本での修業後、アメリカ、ヨーロッパで料理の仕事をするなかで日本を客観的に見るようになり、日本の食文化や食習慣をもう一度掘り下げて勉強したいと思うようになったという。
そんなとき、イギリスで出合ったのがマクロビオティックだった。

「日本で生まれたものなのに、まったく知らなかった。それまでは西洋料理しか勉強していませんでしたから。そこで、日本人として、自分にしかできないことをしようと思ったんです」

帰国後、「MOMINOKI HOUSE」の開業とあわせ、日本CI協会(マクロビオティックの創始者である桜沢如一が創設したマクロビオティックの普及団体)が運営する料理教室で学んだ。
そして、開業にあたってマクロビオティックとともに着目したのが自然栽培だった。

「もともと、プロの料理を食べて育ったこともあって、成長するにつれ、野菜の味がおかしくなってきたなぁと感じていましたし、中学のころには、それが農薬や肥料のせいなんじゃないかと思うようになっていました。自然栽培では、農薬や化学肥料はもちろん、有機肥料も使いません。無農薬、無肥料、不除草で、自然と共存しながら育てた野菜は香りと甘みが違います」

玄米や野菜はすべて、山田さん自ら足を運び、土、水など栽培環境のすべてを五感で確認した農家から直接届く。
開業以来の付き合いのところもあれば、若手の生産者もいる。
野菜のプレートの内容は、その日、届いたものを見て決める。

「マクロビオティックでは、冷えは万病のもとと考えます。だから野菜も火を通すのが基本。ただ、自然栽培の野菜はそのものがおいしいから、味を足す必要はありません。持ち味を引き出すシンプルな調理だけで十分なんです」

一人ひとりが食のセンスを磨くことで日本は変わる

そんな山田さんの料理に魅せられ、日本はもちろん、海外から訪れるリピーターは数知れず。
そのなかには、来日時には必ず来店するというスティービー・ワンダーをはじめ、著名人も少なくない。

「欧米は日本よりもベジタリアンやヴィーガン、マクロビオティックの考え方が進んでいて、実践している方も多い。そういう方が安心して食べられる店って日本ではまだまだ少ないんです」

まして、「MOMINOKI HOUSE」が開業した43年前の日本では、一般にほとんど知られていなかったという。

「日本でもベジタリアンやヴィーガンは増えましたけど、あくまでも自分のダイエットを考えたライフスタイルですから、ちょっとファッション的ですよね。マクロビオティックの場合、東洋医学や東洋哲学の要素も入っていますし、より奥深い。とはいえ、食に関心をもつ入り口はファッションでもいいと思うんです。最初は自分のためにはじめたとしても、自分が学んで腑に落ちたら、若い人に伝えていく。そうして未来につなげていくことが大切だと思っています」

【写真】「大豆ミートの唐揚げset(玄米・味噌汁・野菜)」980円

山田さん自身、料理教室を主宰したり、旧原宿中学校の屋上で野菜をつくる農業体験を行ったりして、マクロビオティック、自然栽培について伝えるほか、渋谷区の中学校の依頼を受けて、職業体験の場を提供するなど、食育にも力を入れている。

「次の世代のために、きちんとした食の環境をととのえて残すこと――それが私たち大人の役目だと思っています。そのために欠かせないのが“食のセンス”を磨くこと。生活の基本である衣食住のうち衣と住は、みんながんばって自分のセンスを磨くけど、食に関してのセンスを気にしている人って少ないんじゃないでしょうか。そのためにも子どものうちからいいものを食べるのはもちろん、いろいろな体験を通して食に関心をもつことが大切。食のセンスを磨けば、“インスタントやジャンク、ファストフードはかっこよくない”となり、体と心にいいものを自然と食べるようになる。それに、食の背景にあるものを知れば、その尊さに気づき食べ物を、そして命を大切にするようにもなります」

【写真】「テンペステーキジンジャーソースset(玄米・味噌汁・野菜)」1,980円

そんな山田さんの夢は、日本が自然栽培の国になること。

「日本は自然豊かな美しい国。すべての農家が自然栽培を取り入れれば、日本人の食生活が健康になるのはもちろん、地球環境もよくなる。
農業で生活を成り立たせることはもちろん、日本人全体の食の意識を変えることも大変なことですから、簡単に実現するとは思っていません。
まずは、農薬や添加物を使った食材、調味料を買わない・食べないことから始めてみる。一人ひとりが実行すればいつか日本全体の食生活を変えられる。
そして食生活を変えることで日本を変えられる。
叶うかわからない夢ですけど、あきらめちゃったらそこで終わってしまう。
だから私はあきらめない。そういう生き方をしたいと思っています」

アクセス

所在地:東京都渋谷区神宮前2-18-5
Tel:03-3405-9144
営業時間:11:00~15:00(L.O.14:30)、17:00~22:00(L.O.21:00)、日曜・祝日の夜は~21:00(L.O.20:00)
定休日:なし
http://www.mominoki-house.net

MOMINOKI HOUSE
オーナーシェフ 
山田 英知郎さん

山田 英知郎さん

東京生まれ。「芝パークホテル」でフランス料理を学んだのち、アメリカ、イギリスで料理の修業を続ける。
帰国後、日本CI協会マクロビオティック クッキングスクール リマ師範課程を修了。
1976年、東京・原宿に自然食レストラン「MOMINOKI HOUSE」を開業し、現在に至る。
日本スローライフ協会理事、ナチュラルフードプラネット理事長を務める。

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