東京感動線

聖俗が出合う場であり続ける
江戸総鎮守の矜持
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神田明神

まち
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境内は聖俗の間にある場所
人とともに神社も変わる

徳川家康が戦勝を祈願したことから、江戸全体を守護する「江戸総鎮守」となった神田明神。
神社がもつべき本来の機能を、いまももち続けることに留意している。

「神社は古くから大衆が集まる文化の発展地でしたので、もとより神社を信仰だけで切り取ることはできません。民俗学には神聖なものと世俗を分ける『聖俗』という考え方があり、境内はまさに聖と俗の中間。移りゆく文化を細かくすくい上げていくことが、神社にはとても必要です」
と語るのは、観禰宜を務める岸川雅範さん。

毎年、多くの人で賑わう「神田祭」も時の流れの中で変容してきた。
江戸時代には豪華な山車が巡行したが、いまでは担ぎ手の威勢のよい掛け声が下町に響き渡る、神輿の宮入りがメイン。

「原始的な祭りは、神の力がたたりに転じないよう願うもの。でも当時と現代では、当然ながら願いごとも変わってきています。時代に合わせ、個人情報漏えいを防ぐためにと『ITお守り』もつくっています」

そのほかプロレスを境内で開催したり、地域性もふまえアニメーションとのコラボグッズも販売。いずれのケースもその時々の聖俗の合間であり続けようと、常に顧みる姿勢が表れているといえる。

「時代の変化を受け入れ、ともに歩む。変わらぬものを守ろうとするばかりでは、世俗と離れてしまい、伝統を継承しつづけられませんから」。

神田明神の看板娘として活躍する「明ちゃん」

御神馬(ごしんめ)とは、神様の乗り物として神社に奉納された馬のこと。
いまや神社で見かけることは珍しくなった御神馬が、神田明神に存在する。
境内を見わたすと社殿前のパドックに、素朴でかわいらしい芦毛のポニーが。
神田祭で神輿を先導するなどの活躍をするこの御神馬は、参拝客から親しみを込めて「明(あかり)ちゃん」と呼ばれている。取材中にはボランティアの方に連れられ、ゆったりと散歩に出かけていった。

「御神馬は人間のように、時間に左右されない存在です。そのせいか、子どもはもちろんですが、大人からの人気もあります」

と権禰宜の岸川さんは話す。

アクセス

所在地:東京都千代田区外神田2-16-2
Tel:03-3254-0753
拝観時間:24時間可能
https://www.kandamyoujin.or.jp/