東京感動線

「見る」の向こう側にある
本質との邂逅
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長應院 空蓮房

まち
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仏教と美術と現代をつなぐ瞑想ギャラリー

白い玉砂利を踏みしめて進んだ先に広がる真っ白な空間。
外界と遮断されたその空間で、作品と一対一で向き合う。
いつしか自分自身を見つめている時間の中で、見えているようで見えていなかったもの、見えるのに見ていなかったものが見えてくる。

浄土宗伝授山長應院の境内にあるギャラリー「空蓮房」は、当代23世住職の谷口昌良さんが2006(平成18)年に開設。
写真が趣味だった先々代の影響で、子どもの頃から写真を撮っていたという谷口さんは20代の頃、ニューヨークの美術大学で写真を学んだ。

「写真と仏教が私にとっての原風景です。大学で学ぶかたわら、僧として活動する中で、写真表現の背景にある思想について問答するようになりました。空蓮房はもともと、その問答をする場所として開きました」

名前に冠した〝空〟は、般若心経で〝色即是空 空即是色〟(物質には実体がない、実体はないけれども存在する)と説く境地に由来する。
〝空〟は、写真表現、仏教のいずれにおいても重要なキーワードだという。

「サン=テグジュペリの『星の王子さま』に〝心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ。かんじんなことは、目に見えないんだよ〟という言葉があります。まさにその通りで、空蓮房で作品と対峙していると、目には見えない本質が見えてくるんです」

来廊を望む声に応え、年2~3回の企画展を開催するギャラリーとなってからも、入廊は一人ずつの完全予約制としている理由もそこにある。

「拝観後に声をかけると、皆さん、言葉がどんどんあふれてくる。感想はもちろんですが、自分のことや悩みなども話してくれます。本質が見えると、自分のことも見えるようになる。その想いを誰かに聞いてもらうことで心が安らかになるんですね。情報過多で本当のことが見えづらくなっているいまの世の中で、本当のことを目にして、そうして誰かの温かみに触れることで、デジタルの世界では満たされない想いを感じていただいているということなのだと思っています」

谷口さんは「お寺は心の相談室」だと言う。
心を清める場所であり、リセットする場所でもある。そして、いままで知らなかった視点から世界を見ることで、新たな光を与えてくれる。空蓮房は、その最たる存在といえるだろう。

長應院ご住職、谷口昌良さんの写真集

谷口さん自身の写真作品が、「写真少年シリーズ」として、これまでに3冊発行されている。
第1弾は、中学・高校時代をまとめた『写真少年 1973-1979(THE BLUE PERIOD 1973-1979)』(蒼穹舎)、第2弾は、アメリカで過ごした10年間をまとめた『写真少年 1979-1988(PHOTO-BOY 1979-1988 MY ROSE PERIOD IN AMERICA)』(空蓮房、YKG publishing)、第3弾は結婚・子供の誕生といった人生の転換期を自身の日記とともにまとめた『写真少年 1988-2011 生活と写真、そしてHome(PHOTO-BOY 1988-2011 Life, Photography, and Home)』(空蓮房、YKG publishing)。

【オンライン店舗】
二手舎
Shelf
MADE IN WONDER
shashasha
SO BOOKS
twelvebooks

【実店舗】
・銀座 蔦屋書店

で購入可能。

アクセス

所在地:東京都台東区蔵前4-17-14
kurenboh@nifty.com
開廊時間:展覧会会期中の水~金10:00~16:00
(最終入廊15:00、1回1時間の完全予約制、
法務の都合で予約日時に制限がある場合あり)
開廊日:展覧会会期中のみ開廊
https://kurenboh.com