東京感動線

世界と東京。東京と地方。
それぞれがつながり、
円滑なコミュニティが生まれる
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Little Japan

Little Japan 代表取締役柚木 理雄さん
柚木 理雄さん
ライフスタイル
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地域と世界が交わる
ユニークなゲストハウス

近年、訪日外国人観光客の増加にともない、日本各地でゲストハウスが続々と登場している。
ゲストハウスというと、単なる簡易宿泊所をイメージする方が多いかもしれないが、注目すべきはそれぞれの施設がじつに個性的である点だ。

2017年5月にオープンした「Little Japan」もそのひとつ。JR浅草橋駅から徒歩6分、多種多様なカルチャーが混在した秋葉原・御徒町エリアの散策に最適な場所に位置し、さまざまな人々で日々賑わいをみせている。

コンセプトは「地域と世界をつなぐ」と「COME AS A GUEST, GO AS A FRIEND(帰るときには友達で)」の2つ。
その言葉を体現するかのように、建物内では外国人や日本人のゲスト、地元住民たちが、時間と空間を共有する独特の環境をつくりあげている。

2019年5月からは1階のカフェ&バーにて「Global Community Cafe」がスタート。台東区在住の外国人と日本人のコミュニケーション促進を目的とした取り組みで、毎週金・日曜日の15時〜17時まで、台東区の人なら誰もが無料で参加できるサービスだ。
外国語が苦手でも、子どもでも、あらゆる人が歓迎され、飲み物やお菓子も無料で用意されている。

その背景にあるのは、日本に住む外国人が年々増え続けている現状。
移住した外国人が日本人コミュニティに溶け込むのはなかなか難しく、小さなトラブルを生むことも少なくないのではないかとの問題意識が、かねてからあった。
ゆえに新しい地域の住民と、もともと住んでいる住民がつながれる場をつくろうと、台東区とNPO法人芸術家の村との協働事業として始めることになったのだ。

【写真1・2】
2019年5月31日「Global Community Cafe」のオープニングイベントが開催。地元の外国人や地域住民、日本人ボランティアなど大勢が集まり賑わいをみせた。簡単な自己紹介から始まり、テーブルを同じくした者どうしが談笑。外国語が苦手でもスタッフがサポートしてくれるので、言葉の壁を心配する必要はない

またカフェ&バーはスペース貸しが行われており、日本の地域の魅力を発信するイベントや、英語でコメディーのパフォーマンスをするオープンマイクイベントなど、多彩なイベントが開催されている。
日中の「気まぐれキッチン」も大人気だ。
これはメニューのみならずキッチン担当までもが日替わりのランチで、地元のお母さんが腕を振るう和食やジビエ料理など、バラエティに富んだメニューが提供されている。

バー営業では酒蔵のある地域へも興味を抱いてもらおうと、47都道府県の日本酒が2時間2000円で飲み放題というお得なプランも実施。
まさにLittle Japanは、東京、地方、世界へ開かれた入り口と呼べるだろう。

【写真3】
Little Japanでのイベント「蔵前ローカルラウンジ」の参加者、上田寛さん。東京と出身地である石川県を行き来し、地元を盛り上げる活動を行なっているという。

【写真4】
第7回「蔵前ローカルラウンジ」の様子。今回は秋田県羽後町を取り上げた

ゲストハウスの新しい価値
2拠点ライフの提案

ゲストハウスを利用した2拠点生活のススメ

ゲストハウス「Little Japan」を運営するのは、柚木理雄さんが代表を務める株式会社Little Japan。

2018年11月には、月額定額制のホステルパスをもつことで、全国のホステルが泊まり放題になる「Hostel Life」を、会社の事業として開始した。
価格は月額1・5万円〜と、非常にリーズナブル。
登録ホステルの数は、ゲストハウスLittle Japanを含み北海道から離島まで現在13施設で、今後は海外も含めたさまざまなホステルで展開される予定だという。

Hostel Lifeによって目指すのは、東京の通勤圏を広げるということ。
いま多くの人は“職場のある場所”を基準に、居住エリアを選んでいるだろう。職住近接で、都心に住み自然が豊かではなかったり、逆に自然豊かな地に住んでいるが、通勤に1時間以上かかるのは、決して珍しい話ではない。

しかし職場の近くにあるホステルに宿泊をして、そこから会社に通えれば、住まいの選択肢は大幅に増える。サーフィンが好きなら海の近く、緑が好きなら山の近くに家を構え、平日はホステルに泊まればいいのだ。

逆に地方在住で、都内へ頻繁に通う仕事の都合などがあるならば、第2の家として東京のホステルを利用するのもおすすめ。場所を特定せずに仕事ができるフリーランス業なら、その日の気分やスケジュールに合わせて各地のホステルに宿泊し、旅するようなライフスタイルが実現できる。

地方への移住はハードルが高く、決断に踏み切れない場合もあるはず。
しかしホステルパスをもてば、東京での仕事を変えることなく地方に住める。
田舎と都心を楽しむ2拠点生活をサポートしてくれるのだ。
Hostel Lifeは、働き方や暮らし方の多様化がより一層進むであろう少し先の未来にマッチした、画期的なサービスといえる。

2拠点ライフスタイルが時間とコストを減らし

出社日は職場から近いホステルに宿泊すれば、通勤時間が短縮される。
週末またはリモートワーク日は自然豊かな地域の自宅で過ごせる。

職場に通える、「首都圏」を広げる

HostelLife利用で“都内にある職場に毎日通うための首都圏”という概念が広がり、住むエリアの選択肢が増え、暮らしがより充実。

ゲストハウスLittle Japanの1階にあるカフェ&バーでは、宿泊者ではない日本人に加え、日常的に外国人が利用している。
スタッフは語学が堪能で、英語以外の複数の言語が飛び交っている

【写真5】
各部屋にはすべて木製2段ベットを設置。各ベットには貴重品ボックスと小さな机、読書灯がついている。写真は2段ベットが1台設置されているツイン。

【写真6】
ドミトリーは女性専用と男女混合がある。

【写真7】
宿泊者専用の畳のラウンジ。無料で利用できる冷蔵庫、ケトル、電子レンジも設置

47都道府県の日本酒が2時間、心ゆくまで楽しめる

ゲストハウス「Little Japan」の1階にあるカフェ&バーでは、47都道府県の日本酒が飲み放題となるプランを用意している。時間はバー営業となる19:00から。予約は不要で、2時間2000円と非常にリーズナブルだ。宿泊者のみならず、このプランを目当てに訪れる外国人観光客や日本人も多いとか。さらに毎月第1水曜日は1500円で飲み放題という、よりお得なイベント「日本酒感謝day」も実施。この日はおつまみやドリンクの持ち込みが自由とのこと。気になる日本酒を存分に楽しめる絶好の機会となるだろう。

つながりが生み出す意識変革が
受容性の高い人と街をつくる

さまざまな切り口のアプローチで、多様な文化を受け入れる場をつくる

──株式会社 Little Japanを設立される前、NPO法人芸術家の村を立ち上げられたそうですね。

ええ、2012年12月ですね。きっかけは東日本大震災でした。
当時、私は農林水産省に勤務をしていたのですが、現場の方々の大変さなどを感じることがあり、自分も直接的な担い手の一人として関わっていきたいと考えたんです。
芸術家の村での主な活動は空き家の活用。私自身、将来的に両親の実家を空き家として引き継ぐ可能性が高く、加えて各地にある空き家が廃墟化している現状を、社会問題として取り上げていきたいという背景がありました。
2017年1月末に農林水産省を退職し、株式会社Little Japanを設立。国の組織にいても正直自分の代わりはいるでしょうし、まだ数の少ないプレイヤーとして、より本格的に取り組んでいこうと決意したんです。

根本的な部分を辿ると、私は小学校1年生から3年生までブラジルで過ごしているんですね。
帰国して思ったのは、日本の教育に対する違和感でした。
同じ価値観を広げたがる、同調圧力というか。もちろんいい面もあります。
しかし私には非常に疑問で、それが大学時代にバックパッカーをしたり、フランスへの留学に結びつくのですが、あるとき、日本が嫌だから海外に逃げていたんだなと気付くんですよ。日本の嫌いなところを自分の手でよくしていこうと思い、農林水産省へ入省しました。

──国の組織にいるからこそ、実現できたこともあるのでは?

国で決める範囲はとても多い気がしたんですが、補助金を出して施策に誘導するよりも、各々が自由に活動するほうがもっと豊かな日本になるのではないか。
自治体や企業、住民それぞれが暮らしたい街をつくり、その集合体が日本という国になっていくほうが、もっと素敵なんじゃないかと。
均一化された日本ではなくて、ですね。
全員が同じルールの中で生活するよりも「自分はこんな街に住みたい」という視点で住む街を選べるようになってほしい。
私はその中のひとつとなる場づくりをしていこうと考えたんです。

──株式会社 Little Japanの概要についてお聞かせください。

「地域の資源を活かした事業をつくる」をミッションとし、「活力があり、多様な側面をもった地域が集まる日本」をビジョンとして掲げています。
ゲストハウスLittle Japanのコンセプトを「地域と世界をつなぐ」にしたのは、ここが海外からのゲストにとって日本への入り口になると考えたから。
東京のみならず、ゲストハウス周辺の地域、そして日本のいろんな地域の魅力を感じてもらい、互いに交流を深める場所にしたいと思い、運営をしています。

私もバックパッカーとして40カ国以上旅をしましたが、ゲストハウスの一番の魅力は人とのつながりだと感じているんです。観光地も行くけれど、強く印象に残っているのは、現地の方とのコミュニケーション。その国で暮らす方はどんな生活をされているのかに興味があるんです。

一方、空き家対策としてゲストハウスをつくる動きも起きていますが、経営が順調でなければ、空き家に戻ってしまう懸念があります。
そんなゲストハウスの活用法が、2拠点居住になるのではないかと考えました。それが「Hostel Life」にも結びついていて、私がかねてより提起している空き家問題解決の手段にも最適なのではないかと。
さらに利用者は田舎と東京の暮らしを楽しむ、新しいライフスタイルとしてより幸福な生活を送ることができます。
この全く異なる2つの観点から、Hostel Lifeは生まれました。

また事務局メンバーでもある「ゲストハウスサミット」では、全国からゲストハウスのオーナーが集結し、それぞれの取り組みの共有、オーナー同士の連携、ゲストハウスの未来について話し合うといった活動を行なっています。

──ゲストハウスLittle Japanが地域と世界をつなぐ場として発展し、Hostel Lifeの利用が当たり前となった未来を、どのようにイメージされていますか?

ゲストハウスはすごくいい環境が生み出されているんです。
外国人ゲスト、地元の住民の方、ホステルパス利用者、カフェ&バーのお客さま、いろんな方が集まり、ミックスされている。
この状態が続いたらうれしいですね。つながりが創出されることで、互いに多様性を許容し合い、より多様な文化が受け入れられるはずですから。

アクセス

所在地:東京都台東区浅草橋3-10-8
Tel: 03-5825-4076
チェックイン:15:00〜23:00
チェックアウト:8:00〜10:00
ベッド数:34
宿泊料金:ツイン5,600円/泊/部屋(一人2,800円/泊)〜、4人部屋 9,800円/泊/部屋(一人2,450円/泊)〜、6人部屋 1,4700円/泊/部屋(一人2,450円/泊)〜、女性専用6人ドミトリー 2,660円/泊〜、男女混合10人ドミトリー2,450円/泊〜

http://www.littlejapan.jp/

Little Japan 代表取締役 
柚木 理雄さん

柚木 理雄さん

株式会社Little Japan代表、NPO法人芸術家の村理事長、中央大学特任准教授。兵庫県出身。京都大学卒業後、農林水産省に入省。
2012年NPO法人芸術家の村を、2017年株式会社Little Japanを設立

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