東京感動線

一人ひとりの“個彩”を生かす教育で
知識を生きていくための知恵に変える
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SPACE

代表取締役 最高情熱責任者(CEO)福本理恵さん
福本理恵さん
交流・体験
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自分らしく学べる教育が
自分らしく生きる力になる

「子どもが100人いれば100通りの感じ方があり、それぞれに合う学び方があります。その一人ひとりの才能を生かす教育の仕組みをつくりたいと思っています」
 個別最適な学びの社会実装を進める「SPACE」の福本理恵さんは、起業のきっかけをそう教えてくれた。福本さんは、東京大学と日本財団が共同で行う、学校での集団学習にはなじめないが、ユニークな才能(異才)をもつ子どもたちを対象とした「異才発掘プロジェクトROCKET」のプロジェクトリーダーとして、2014(平成26)年の立ち上げから運営まで、5年間にわたって全般を指揮した。
「ROCKETでは、教科書ではなく、活動(体験)を通して学びます。知識をつめ込むのではなく、必要なものを必要なときに取り入れて学ぶ。その“必要”は子ども自身が決めます。そうして、いろいろな選択肢の中から子どもが自分で考えて判断し、自分の行動に責任をもちながら学ぶ。そういう仕組みが日本の社会に必要だと感じています。そのためにも、教育を学校内に閉じるのではなく、社会と共有・連携することが大切だと考えています」
 たとえば、福本さんが広島県で手掛けたプログラムでは、日本酒をテーマに、酒と水の違い、精米の仕方、手作業と機械化の違いなど、子どもたちはいろいろな教科にひも付く知識を、体験を通して楽しみながら学んだ。さらに酒蔵の職人をはじめ、地元の人たちを巻き込むことによって、地域自体の活性化も促した。

【画像1】
オンライン授業とフィールドワークを組み合わせた「宝島キッズラーニングプロジェクト」で訪れた、三宅島でのフィールドワークの様子

「子どもたちは、実際に知識が必要とされる場面で、体験を通して学ぶので、その知識がどう役立つのかを身をもって理解できます。知識を、生きていくために必要な知恵に変えられるんです。これは教科書の中だけでは学べません。そもそも、全教科をまんべんなく学ぶ必要はないと思っています。子どもが自分の興味のあることについて探究し続けるだけでも、いろいろな教科の知識が逆三角形状に広がっていきますから。むしろこれからの時代は、子どもがキュレートしたものをタグ付けして、ひとつのきっかけからこれだけの知識を学んだのだということを、フィードバックすればいいと思うんです。もしほかのものに興味が移ったとして、足りない知識があれば、必要に応じて補っていく。そういう学び方もできると思っています」
 与えられるのではなく、自ら選ぶ。その学び方を続けるうち、子どもたちは自分に何が合っていて、何が合っていないのかに気づく。それが自分らしさを知ることにつながるのだと福本さんは考える。
「自分らしくあるってどういうことだろう、自分にしかできないことってなんだろうという想いは誰にでもあって、それが他人と同化し過ぎると、存在意義がなくなると感じている子どもが多いんです。それは大人だって変わりません。ひとつの軸を目指すゴールで互いに競争させるのではなく、互いの違いを生かして協同する。違いを認め合って、自分ができることを出し合う中で、多様な才能を発揮し合える場が生まれていくのではないでしょうか。そのために必要なのは、自分らしさを際立てる教育。学習の方法や内容、場所など、いろいろな選択肢のある環境を整えることだと思っています。子ども一人ひとりが自分に自信をもって、自分らしく生きてほしい──それが私の願いです」

【画像2】
「魚は魚か!? 魚の進化を追え」をテーマにしたオンライン授業(ライブ)の様子。本物の魚に触れ、観察しながら学ぶプログラム

アクセス

株式会社SPACE
所在地:東京都世田谷区北沢1-19-15-302
Tel:03-4455-9259

https://space-inc.jp

代表取締役 最高情熱責任者(CEO) 
福本理恵さん

福本理恵さん
ふくもと・りえ。東京大学先端科学技術研究センターの交流研究員を経て、東京大学大学院博士課程に進学。「異才発掘プロジェクトROCKET」のプロジェクトリーダーとしての知見を生かし、2020年8月にSPACEを創業した。

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