

PROJECT 2
無人決済店舗

無人決済店舗
石川 恵理子
ERIKO ISHIKAWA
- 事業創造本部
- 新事業・地域活性化部門
- 事業開発グループ
- 2008年入社(総合職)
「NEXT10」でオープンイノベーション(※)の活用を目標に掲げたことと連動して、2017年4月に「JR東日本スタートアッププログラム」が立ち上がった。これは、JR東日本との協業を望むベンチャー企業を募り、審査を経てテストマーケティングを実施するもの。この一連に加わり、採択した企業とWin-Winの関係を築いて新サービスを具現化するとともに、ベンチャー企業との協業のノウハウを蓄積するのが石川のミッションである。17年度は11件、18年度は18件の提案が採択され実証実験が進んでいる。
※オープンイノベーション:自社の技術だけでなく、他社、大学、研究機関などの外部と協力をし、それぞれの持つ独自の技術やアイデアを組み合わせて、今までにないサービス、商品、ビジネスモデルを生み出す手法

ベンチャーとの協業を活発化する「JR東日本スタートアッププログラム」。
石川は「JR東日本スタートアッププログラム」立ち上げ当初からのメンバーの1人である。認知度を広げ2回目の審査・採択を順調に終えたこのプログラムだが、初回となる2017年度はなかなかの生みの苦労を経験したようだ。
「2017年4月に募集を始めて5月末に締め切り。200件を超える応募の中から書類審査・プレゼン審査を経て採択した企業と、3ヵ月で社内調整を含めて協業プランの作り込みを行い実証実験へと進んだのですが、時間がない中で、採択した11件すべての実証を行わなければならず大変でした。目まぐるしい実験準備とプログラムの全体運営で後半は怒涛の毎日。実証実験前日まで実施できないのでは、という不安に駆られたほどです。しかし、他社では数件に絞って実証実験を行うのに対して、全採択企業と実施する当社の姿勢はベンチャー企業に好評でした」
協業プランの担当は主要メンバー以外にも協力を仰ぎ振り分けたが、このとき石川が担当したのは(株)フーディソンとの“ネットで注文し駅ナカで受け取れる鮮魚販売”など2件だった。そして翌年、第1回のプログラムで最優秀賞を受賞し実証実験が継続していた、サインポスト(株)との協業による無人決済店舗のプロジェクトにも加わることになった。
「担当ではなかったのですが、大宮で行った初年度の実証実験(※)に私も立ち合っていました。サインポスト社や当社の担当、その他関係者が家族のように一体化していて、前向きな熱意に溢れていたのが印象的でした。その雰囲気が2年目の実証実験にも引き継がれたことが、難題を乗り越える大きな原動力になったと思います」
(※2017年11月20~26日に大宮駅西口イベントスペースで実施)

コンビニエンスストアと自販機の間を埋める存在に。
大宮での初年度の実証実験と2年目の今回の実証実験が大きく異なるのは、同時に3名まで入店できるようにしたことと、実用化を見据え実施期間が2018年10月17日~12月14日の2ヵ月に及ぶこと。実施箇所は5・6番線ホーム上で、宇都宮線、高崎線や湘南新宿ラインが忙しく行き来するホームだけに、安全には特に注意しなければならない。
「店舗の設営はもちろん、商品手配や店舗運営など、調整事項は数多く、鉄道部門や支社、グループ会社など多岐に渡る部署との調整が必要でした。ただ、社内にも新サービス創出への理解が進んでいて、“本来のルールから少し踏み出すが、実験なのでここまでは許そう”と言っていただける場面が多々ありました」
石川は入社以来、主に駅ビルや駅ナカの開発・運営で経験を積んできた。そうしたキャリアで得た社内・グループ会社の人たちとの信頼関係も、今回の仕事に活きたようだ。
近年、海外で無人店舗が登場しつつあるが、石川たちの店舗の仕組みは次のようになる。入口でSuicaをタッチ→ドアが開いて入店→欲しい商品を手に取る/カメラが認識→出口前にあるディスプレイに買い物内容が表示→間違いなければSuicaをタッチ→ドアが開いて店外へ。実験の結果は上々で、大きなトラブルもなく、商品の認識率や売上高などの目標をおおむね達成したという。
「今あるコンビニエンスストアをすべて無人店舗に置き換えようとは考えていません。主に人手不足や採算の問題で撤退したり出店できない場所への投入をめざしています。自動販売機以上、コンビニエンスストア未満という立ち位置でしょうか」
無人決済店舗はあくまでも、お客さまの利便性や駅の魅力を高めるために開発を進めているのである。このプロジェクトの他、フーディソン社との協業も継続中で、第2回のスタートアッププロクラムで採択された案件の担当も加わった。忙しくなるが、それらの実現までしっかり伴走したいと石川は語る。
無人決済店舗の実証実験では、お客さまから「こういうお店がたくさんできると良いわね」など応援の声を数多くいただき、マスコミやWebの報道からも期待感が感じられました。JR東日本がさまざまなチャレンジをすることに、世の中の方たちは私たちの想像以上に意義を感じてくださっているんですね。JR東日本の社員として安全に関する失敗は決して許されませんが、そうでないところは積極的に挑戦し、お客さまとともに成長するビジネスがあっても良いのだと気づきました。そうした姿勢で、スタートアッププログラムのさまざまな新サービスをスピード感を持って具現化していくつもりです。

大学時代に叔母の子供のベビーシッターをした経験から、働きながら子育てをしやすい環境づくりに寄与したいと考えて就職活動を進めた。そんな中で、通勤に最も利用される鉄道・駅に興味を持ったという。入社後はエキュート品川の運営やアトレ吉祥寺のオープン、エキュート大宮の販売促進などを担当。「これまでの経験から、駅やその周辺を便利にすることも、生活に余裕を生み、子育てしやすい環境の整備につながると考えるようになりました」。