

INTERVIEW 4
海外鉄道コンサルティング業務
OJTトレーニー

海外鉄道
コンサルティング
業務
OJTトレーニー
髙安 洋
HIROSHI TAKAYASU
- 国際事業本部
- インド高速鉄道部門
- 1997年入社(エリア職)
海外鉄道コンサルティング業務OJTトレーニーは、JR東日本がかかわる海外鉄道コンサルティング業務の一員として、3ヶ月間、現地拠点に赴任して、運輸、車両、土木、建築、電気、プロジェクトオフィス運営管理など、各人の所属分野における知識と経験を身につけるプログラム。現地の先輩担当者の下で実際に進行しているプロジェクトにかかわっていくことになり、海外における鉄道コンサルティング業務の実態などについて身をもって学ぶことができる。

仕事の他でも学び続けることで、自分の可能性を広げる。
私はもとから新たなものを「学ぶ」ことへの興味が強い人間なのかもしれません。幼い頃から鉄道が好きで、高校を出るとすぐJR東日本に入社しました。駅業務や車掌を経験した後、東京支社の指令室で指令員を務めた頃から「安全」に関してより深い知識を身につけたいと考え始め、2007年にeラーニングを活用した通信制の大学に入学。専攻した安全人間工学の勉強はとても興味深く、大学院にまで進むことになりました。
修士課程は通信制というわけにはいかず、フレックスタイム制度を利用しながら何とか修了しましたが、当時所属していた運輸車両部の上司や同僚の理解と協力のおかげだと感謝しています。そして身の回りが落ち着いてしばらく経った頃に知ったのが、海外鉄道コンサルティング業務OJTトレーニー制度(以下、海外OJT)でした。
このプログラムの第3回に参加した方から偶然話を聞く機会があり、学びへの興味に再び火が着いてしまいました。
幸いにも社内選考を通り、私が参加したのは2014年に実施された第4回のプログラムです。このときの派遣先にはインドネシア、ベトナム、ミャンマー、インドがあり、私はインドネシアへ行くことになりました。10人ほどのメンバーは土木や建築、軌道、電気などの部門に所属する技術者が多く、日本コンサルタンツ(株)<※>の一員として3ヶ月間、各自の専門性を活かしながら現地のプロジェクトに加わり、海外での鉄道コンサルティング業務の実際を学んできました。
※日本コンサルタンツ(株):JR東日本をはじめとする日本の主な鉄道事業者10社が出資する、海外鉄道コンサルタント会社。

海外でとくに重要なのは、筋道と論理を立てて説明できる力。
海外OJTの間、日本コンサルタンツ(株)の先輩の下で私が主に携わったのは、日本でも担当していた輸送計画に関する提案でした。クライアントであるジャカルタ都市鉄道は当時、既存エリア内での電化区間および高架・複々線区間の延伸を進めており、コンサルタントとして工事期間中や工事完了後の輸送力増強に合わせたダイヤ編成などを提案するものでした。まず先方に、現状のダイヤの提供を依頼したところ、「なぜ必要なんだ」と説明を求められた時点でカルチャーショックを覚えることになりました。JR東日本の社内なら、今後の輸送計画のためと話せば今のダイヤが必要なのは言わなくても理解してくれます。しかし海外のプロジェクトではそのような共通理解は通じず、一つひとつ丁寧に説明しながら仕事を進めなければならないことを学びました。
ただ、筋道と論理を立てて話せば、相手もちゃんと理解し対応してくれるんですよね。こうしたスキルを磨けば、自分にできることが飛躍的に広がることも知りました。
3ヶ月という期間はあっという間に過ぎ、海外事業への関心を膨らませたままで帰国した、というのが実際のところかもしれません。毎年の上司との面談で海外事業を希望し、2017年に今の部署に異動することができました。今回はインド。現地の一大巨大国家プロジェクトである、日本の新幹線方式を取り入れた高速鉄道の建設プロジェクトにかかわることになりました。短期間ではあったもののインドネシアの海外OJTで得たものは多く、文化や考え方の違いを乗り越えるコツなどを思い出しながら、インド高速鉄道の実現のため、これまで学んできたことを発揮したいと考えています。
インド高速鉄道プロジェクトにおけるコンサルティング業務は、インドネシアのプロジェクトと同じく日本コンサルタンツが主体で、私たちJR東日本は、その支援や全体調整の業務を担っています。その中で私が主に担当しているのは、インド高速鉄道が開業した後も長く運営と保守管理を担っていく現地人材の育成計画の立案と推進。すでに、現地での運営主体となるインド高速鉄道公社の幹部クラスを日本に招いての研修を実施し、今後予定されている企画部門や現場管理者層の訪日研修も受け入れ準備を進めているところです。建設だけでなく、人材育成などのソフト面まで含めた海外鉄道のコンサルティングは、今後、鉄道インフラを拡充していく新興国や途上国で大きな需要があると予想されます。これまでとは勝手の違う仕事ですが、しっかり知識と経験を蓄え、JR東日本の海外事業展開に貢献したいと考えています。

インドネシアでの海外OJTをともに経験したメンバーとは、今も定期的に集まって当時の思い出話で盛り上がったり近況報告をしたりしています。私にとっては初めての海外生活で、仕事上の英語や日常のインドネシア語など「語学の壁」には苦労しましたが、乗り越えられたのは同じ状況をともにする仲間がいて支え合えたからだと思います。海外で仕事をする上で私が大切だと思うのは、語学はもちろんですが、体力・精神力と何事も楽しめること。とくに海外の人との文化や考え方の壁は、「なるほどそう考えるのか」と違いを楽しみ受け入れることで乗り越えられます。