東京感動線

好きなもので誰かとつながる。
少人数の体験プログラムで
駅・まち・人の新しい魅力を発見
109

この記事をシェア

お気に入りに追加する

東京感動線×TABICA

交流・体験
Scroll

東京感動線がTABICAとコラボレーションした「東京感動線×TABICA」。このプロジェクトでは、体験を提供する“ホスト”と参加する“ゲスト”をつなぐプラットフォーム「TABICA」を通して、山手線沿線のまちと人、人と人、さらにはJR東日本が持つ場など、さまざまなつながりを生み出してきました。これまでに実施した体験プログラムや目指している未来について、山手線プロジェクトのメンバーが語ります。

東京感動線が届ける体験の4つの方向性

──「東京感動線×TABICA」の概要について教えてください。

川井:TABICAは、自分の好きなことを体験として誰かに伝えたい方と、なにか新しい体験がしたいと思っている方をつなぐ、有料のオンラインプラットフォームです。各プログラムは少人数で、先生と生徒というよりもっとフラットな雰囲気で楽しめるのが魅力。参加者同士のコミュニケーションを大事にしていることも特徴であり、さまざまな“好きなこと”でつながる場が生まれています。

東京感動線が持つ、「人と人、人とまちをつなげる」ことだったり、駅からどんどんまちに出ていこうという思想が、TABICAの考え方とすごくマッチしていたんです。協業できる可能性をお互いに探って業務提携できることになり、2019年10月から東京感動線×TABICAが本格稼働しました。

東京もひとつのローカルと捉えると、山手線沿線の駅やその周りに、もっとおもしろい場所や、まだまだ隠されている人の魅力があるんじゃないか。そんな想いを起点に、山手線沿線の人やコトをもっと発掘していくことを目指しています。

──プログラムはどのようなものがあるのでしょうか。

川井:今年度、私たち東京感動線が提供していきたい体験には4つの大きな方向性があり、それを東京感動線×TABICAのプログラムにも反映しています。

まずは「沿線の地域とつながる」。地域とのつながりをすでに持っている駅が多くあるので、それを生かして沿線地域とつながっていくことです。
2つ目が「現場とつながる」。当社が持っているあまり公開したことのない資産だったり、当社だから提供できるような場所をもっと楽しんでいただくために、そこで働いている現場のみなさんとお客様がつながっていくことが大切だと思っています。
3つ目が「地方とつながる」。山手線を起点にして、東京にいながら地方の豊かさを感じてもらうプログラムです。地方の方と交流するオンライン体験のほか、たとえば西会津地方とコラボレーションして開催した野草茶教室は、現地の方をホストとして東京に招き、野草茶と西会津の魅力を伝えていただくプログラムでした。
4つ目は、現在計画中の「海外とつながる」。今は減っているのですが、これから戻ってくるであろうインバウンドの方に対しても、東京の観光スポット巡りだけじゃなく、人のよさや、その場所に根づいているストーリーをもっとお伝えできるようなツアーをつくっていきたいと思っています。

【画像1】
左から、新藤友理、齊藤千明、岳中美也、川井恵里子。

大反響を呼んだ車両センターの公開イベント

──これまでに開催したプログラムについて教えてください。

齊藤:象徴的なプログラムのひとつは、4つの方向性のうち「現場とつながる」に当てはまる「【JR東日本 東京感動線×松戸車両センター】車両展示&お仕事紹介」でしょうか。当社の鉄道資産を活用した、松戸にある車両センターの見学会です。

岳中:もともとは、成田線開業120周年を記念して車両センターの公開をしたいけれど、コロナの状況下ではどのようなものにしたらいいかと相談を受けたのがきっかけです。それで、人数を制限できる東京感動線×TABICAのプログラムとして実施することを提案して。これまで行ってきた車両センターの公開イベントは、ただ自由に見てもらうという形式だったのですが、TABICAの特徴を活かすとしたら、なにかを学んだり、体験してもらえる場にしたいと関係社員に伝え、企画を考えてもらいました。

初めての試みだったので悩みながらもいろいろな工夫を凝らしました。いつも使っている工具を並べて説明文をつけるなど、学びが得られるような展示にするほか、お客様へお渡しするお土産も、お越しいただく方には鉄道好きな人が多いことと、2000円の参加費をいただくこともあって、特別なものにしたいと考えました。そこで、120周年のラッピング電車の車体に使用した端材をお土産セットに入れたんです。そしたら参加者がTwitterで「本物が入ってた!」と投稿してくれて。ターゲット層にも合う素敵なアイデアだったと思います。

齊藤:募集を開始したとき、東京感動線のTwitterでも発信したんですね。どういう方がどのくらい反応してくれるかがまったくわからなかったので、試しにやってみようということで。そうしたら、その投稿がものすごい反響を呼んで、数日ですべての回、合計160名が満員になりました。

──いつもと異なる形式で実施したことで、当日の様子にも違いはありましたか?

岳中:通常の公開イベントでは人が押し寄せるのですが、今回は人数を絞って実施したこともあり、同じ趣味を持つ人どうしの交流が生まれやすい環境になったのではないかと思います。それこそが、東京感動線×TABICAで私たちが実現したいと思っていたところ。知らない人どうしが鉄道の話題で盛り上がっていたりする光景があちらこちらで見られたので、あらためていい取り組みだなと感じました。

【画像2】
「【JR東日本 東京感動線×松戸車両センター】車両展示&お仕事紹介」。普段は禁止されている、線路上での写真撮影ができたことも好評だった。

知られざる明治神宮に触れるプログラム

──まちと連携して実施したプログラムにはどのようなものがありますか?

川井:2020年10月に行った「【JR東日本 東京感動線×明治神宮】神職と歩く明治神宮100年の杜」があります。もともとは、明治神宮が鎮座100周年を迎えるということで、代々木駅に一緒になにかやりましょうとお声がけをいただいたことが始まりです。コロナ禍の状況を考慮し、東京感動線×TABICAのスキームを使って少人数でご案内するツアーを提案しました。

当日は案内役の神職の方に、一緒に歩きながら歴史について説明いただいたりしました。明治神宮の杜って、たぬきがいたり、大鷲が飛んでいたりするんです。電車の音が聞こえるくらい駅に近い場所にそういう環境がある。なんとなくしか知らなかったことを、深く知ってもらうことができたと思います。

境内まで歩いてお参りをしたあとは、社務所講堂で杜について講義をしていただきました。明治神宮の杜は、およそ100年前に、100年で完成するように計画されてつくられた環境なんです。当時、計画に賛同した全国の学生たちが、自分のまちから電車で木を運んできたというエピソードなど、こういう機会でなければ知りえないような話を1時間弱講義していただいて。参加者は年齢が高い人が多いかなと思っていたのですが、30代くらいが一番多くて、20代のカップルもいました。あとでTABICAのwebにあるレビューを拝見したら、「明治神宮で挙式を挙げる予定なので参加しました」という方もいらっしゃいましたね。


【画像3】
「【JR東日本 東京感動線×明治神宮】神職と歩く明治神宮100年の杜」の様子。15名ずつ、2回に分けて開催した。

駅は、消費する場所から有機的なつながりを生み出す場所へ

──スタートから約2年が経とうとしている東京感動線×TABICA。今後の展開を教えてください。

新藤:グループ会社との幅広いつながりを活かした企画にも取り組んでいきたいと考えています。そのひとつが、飯田橋のホテルメトロポリタン エドモントというグループ会社が運営しているホテルのバーを使い、バーテンダー体験ができるプログラム。カウンターに立ち、シェーカーを振ってカクテル作りにチャレンジしたり、バーテンダーにお酒について質問できるようにしたいと思っています。少人数の6名くらいで実施する予定なので、お客様どうしのコミュニケーションも生まれやすいはずです。

ポイントは、駅からホテルまでの道のりも楽しんでもらえるようにしていること。最寄りの飯田橋駅が昨年リニューアルをしたので、駅員の方にまちの歴史も交えて駅の説明をしてもらい、さらにホテルのベルスタッフがおすすめするスポットを巡りながらホテルまでご案内するという、まち歩きの要素も入れています。ひとつのコト体験だけではなく、駅から始まってまちを歩き、目的地であるホテルへと回遊できるプログラムにしたいと思っています。

──これまでの駅は交通の結節点でしたが、東京感動線×TABICAの取り組みを通して「人と人、人とまちをつなぐ結節点」という新しい役割が生まれている気がします。

齊藤:東京感動線は、駅をこれまでの「モノやサービスを消費する場所」から、人が集まるきっかけやまちへの流動、関わる人どうしの交流といった、有機的なつながりを生み出す場所へと変えていく取り組みです。

つながりを培うために、交流拠点をつくったり、フリーマガジン『東京感動線Magazine』やSNS、webで発信したりといろいろなアプローチ方法をとっていますが、そのなかのひとつが東京感動線×TABICA。気軽に参加していただくなかで、山手線30駅を舞台にしたいろんなまちの魅力に気づいていただけるようにしたいです。

加えて、私たちから一方的に情報を発信するのではなく、参加した方が発信することで、また違った魅力が広まっていくおもしろさもあると思います。松戸車両センターの事例もそうですが、ひとつのテーマに引き寄せられた人たちの交流が生まれるとき、きっとそこには熱量があると思うんです。そういう、“消費する場所”だけの駅ではなかなか生まれなかった感覚が、東京感動線×TABICAを通してどんどん伝播していけばいいですね。

川井:この夏には新しい取り組みとして、まちの案内人を育成するプログラム「TOKYO SEEDS COLLEGE」も始めました。思い描いているのは、まちに案内人があふれるようになること。老若男女さまざまな方が、隠れたまちの魅力を伝えるようになる未来を目指しています。


【画像4】
「TOKYO SEEDS COLLEGE」の第1回の舞台は池袋。全5回の講座を通して、池袋の魅力を伝える「まち歩きツアー」を作成する。


「東京感動線×TABICA」特設ページ