イメージを覆す寝かせ玄米の甘み
目と鼻の先に隅田川。住所なら蔵前2丁目。
見ようによっては殺風景といえなくもない古めのビルが建ち並ぶ通りに「結わえる本店」がある。
後に聞いた話だが、いまから400年近く前、江戸幕府がこの地に米蔵を置いたことで蔵前と呼ばれたその起源にあやかるかたちで店を構えたという。
その軒下に天日干しの梅の実。
何もないような場所がほのかに色づくような情景に気を取られつつ店内に入ると、右手に物販コーナー。一見して和の食材や調味料が豊富に取り揃えられていることがわかる。
左手は、昼は一膳飯屋、夜は呑み屋になるという気取りを感じさせない食堂が広がる。
そして、悔しいほど見事に玄米のイメージが覆されてしまった。
もちっとした食感は、見た目に相まって温められた赤飯のようで、噛むほどにしっかりとした甘みを感じる。数種から選べる汁物とおばんざいの薄口の風味との相性もいい。
「僕もここに来るまでは、昔の食材の本当のよさを知りませんでした」
そう話してくれたのは、取材時点で3カ月前に入社したという蔵前本店の前田敏幸マネジャーだ。
39歳になる前田さんは、和食の厨房経験が長いぶんだけ結わえるの取り組みに驚きを覚えたという。
「味噌や醤油は生産者と直接会ってよりよいものをつくったり、すべてが真剣なのです。その活動の素晴らしさをお客さまに伝えたい。いやまったく、ここに来るまでの僕は健康じゃなかったと断言できます」
私たちのミッションは食で世の中を変えていくこと
「私だってお酒やめろといわれたらできませんよ」。これは蔵前本店チーフアドバイザーの田口明香(さやか)さんの言葉だ。いくら田口さんがさっぱりした性格の方でも、この発言は慎重に扱わなければならない。
結わえるのコンセプトは、日本の伝統的生活文化と現代を“結わえる”こと。
ただし持続がもっとも大事なので、寝かせ玄米ベースの基本食と、酒を含む快楽食をメリハリつけて楽しむことを大事にするという。
結わえる本店が昼夜営業するのも、彼らの言葉を借りれば日本古来の世界観を表す非日常のハレと日常のケに則ったものだそうだ。
「昔の暮らし方がよいと聞かされても、この時代に取り入れるのはかなり難しいのは事実です。けれど何も変えなければ、60代あたりまでには何かしらの問題を抱えてしまい、快楽食になど手が出せなくなる。そうならないための解決策のひとつが寝かせ玄米です」
田口さんには玄米食を勧める原体験がある。前職のエステシャン時代は、要するに身体の外側からの施術だけではお客の悩みを根本的に改善できず、探求心と責任感から自ら玄米食を研究したそうだ。
その効果は自身の体温上昇によって体感できたという。
実体験においては、結わえる代表取締役の荻野芳隆氏もまた痛感の記憶がある。
これまた前職で食関係のコンサルタントを行っていたときに玄米の効能をしり、なおかつ「健康になるには80点でいい」と悟ったという。
「ですから私たちのミッションは、食で世の中を変えていくことなのです」
そうした志の高さが滋養に満ちた寝かせ玄米に炊き込まれている。
であれば固定概念など簡単に覆るだろう。何しろ旨いに勝るものはない。あるいは寝かせ玄米を口にする前に見た梅の天日干し、実は田口さんが整えた情景を懐かしく感じた時点で、かつて米蔵が建ち並んだ蔵前の磁場に心が反応していたのかもしれない。
アクセス
所在地:東京都台東区蔵前2-14-14
【一膳飯屋(ランチ)】
Tel:03-5829-9929
営業時間:11:30~14:30(L.O.14:00)
定休日:日曜、お盆、年末年始
【酒場(ディナー)】
Tel:03-5829-9929
営業時間:平日17:30〜23:00(L.O.22:30)/ 土祝17:00〜22:00(L.O.21:30)
定休日:日曜、お盆、年末年始
【よろずや】
Tel:03-3863-1030
営業時間:11:30~20:00
定休日:日曜、お盆、年末年始
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