株式会社East 代表取締役
開 永一郎さん

ミュージアムグッズの企画、デザイン、製造からミュージアムショップの運営も手掛ける。
好きなミュージアムはロンドンのヴィクトリア・アンド・アルバート博物館
http://east-inc.co.jp/main/
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美術館や博物館に行く楽しみのひとつに、ミュージアムグッズがある。ポストカードやマグカップ、マグネット、Tシャツなどのグッズに、「持って帰りたい」「誰かに贈りたい」という気持ちや、作品やアーティストについて、「もっと知りたい」という好奇心がわいてくる。
そんなミュージアムグッズの数々を手掛けるのが、開 永一郎さんが代表を務める株式会社Eastだ。2010年の『ルーシー・リー展』や2016年『生誕300年記念 若冲展』、2018年『ムンク展 共鳴する魂の叫び』、2022年『マリー・クワント展』など、「East」がミュージアムグッズを制作した展覧会を挙げていくときりがない。印象派から現代アート、日本画、陶芸、デザイン、ファッションetc.…とジャンルも時代も縦横無尽。アート好きならずとも、きっとどこかで「East」のミュージアムグッズに出会っているのではないだろうか。
開さんが大切にするのは、作品の持つ「本物」の力。「グッズを本物に近づけたいわけではないです。何十億もの価値がある絵画を1枚160円のポストカードで同じように再現することは残念ながら不可能です。それでも、ていねいにつくられたカードは、本物の作品をご覧になられた人たちの感動を、記憶に残すお役に立てるかもしれません」
展覧会開催の1~5年前から準備がスタート。開さんはできる限り、関連の土地や時代背景のリサーチ、周囲へのインタビューを重ねて、アーティストや作品の魅力をグッズへと反映させていく。
そのグッズには美しさとともにユーモアがある。開さんいわく「作品を見た人や好きな人に通じる洒落のようなもの」。その代表例が、2022年に静嘉堂文庫美術館のグッズとして制作した「曜変天目(稲葉天目)」の原寸大ぬいぐるみ。本物は購入はもちろん、触れることさえ不可能に近い国宝の茶碗を〝ぬいぐるみ〟にしてしまうという大胆で楽しい発想。「でも、ショップでこれを手に取った人は、本物みたいに両手で大事そうに扱うんですよ」と開さんは笑う。これこそが、まさに作品の持つ「本物」の力だろう。
ぬいぐるみのアイディアに対し、多くの人が「できない」と口にしたが、開さんは「だからこそ、できたらおもしろいな」と考える人。ものづくりの現場と試行錯誤を重ね、完成に至る。大きな話題と人気を呼び、新聞の一面にも取り上げられた。
そして「East」はグッズをつくるだけではなく、ミュージアムショップの運営も行う。「すべての展覧会ではないのですが、内装から什器のデザイン、ショップスタッフの面接も行います」。単にグッズを売る場所ではない、展示室の延長にあるミュージアムショップ。壁の色やディスプレイ、商品構成にもこだわる。スタッフはお客さまの感動に寄り添い、展覧会やグッズ制作に込められた想いも伝えていく。「つい先日、13年も前に開催された展覧会のポストカードを何枚も大切そうにお持ちくださった人とお会いしました。ポストカードを見ると、展覧会で作品を見た時の感動がはっきりと思い出されると言ってくださり、続けてきてよかったと、心から思えた瞬間でした」
今後も展覧会の予定は目白押し。どんなグッズでアートの魅力をさらに広げてくれるのか楽しみだ。
「East」が手掛けたミュージアムグッズの数々
【画像1】
2022年開催の『特別展アリス-へんてこりん、へんてこりんな世界』で人気を集めたチェシャ猫のぬいぐるみ。コロンとした形がたまらない。
【画像2】
2022年『マリー・クワント展』のモノトーンマグカップ。シンボルでもある花をはじめ、水玉、ストライプなどのパターンは手描きで描かれている。
【画像3】
2022年『イッタラ展 フィンランドガラスのきらめき』では、オイヴァ・トイッカの作品をマグネットとピンバッジに。ガラスの光沢感まで再現。