Lurf MUSEUM 運営責任者
松川 直仁(まつかわ なおひと)さん

恵比寿・代官山エリアといえば、アパレルの旗艦店やセレクトショップが立ち並ぶトレンドの発信地。一方で、アートギャラリーが点在していたり、蔦屋書店の入る複合施設があったりと、大人の知的好奇心をそそる、文化的なまちという面もある。
そんなまちに昨年、オープンしたのが、Lurf MUSEUM(ルーフミュージアム)。入り口から覗き込むと落ち着いた雰囲気のカフェのようであり、Tシャツや雑貨が並ぶセレクトショップのようであり。別の入り口には、美術館の展示案内のようなフラッグが掲げられ、名前もミュージアムとなっている。いったい、ここは何の施設だろうか?
中に入ってみると、そこはゆったりとしたカフェスペース。1920~40年代のヴィンテージの北欧家具が配され、同じく北欧のヴィンテージ照明が光の層を重ねたかのような柔らかい明かりで空間を照らしている。ミュージアムピース級の逸品といえるほどの椅子に座って、照明の光に癒やされていると、聞こえてくる音楽はアナログレコードによるもの。オーディオシステムには、50~60年代のスピーカーや真空管アンプが使われ、マニアも驚きだ。提供されるコーヒーはもちろん、食器に至るまで、ひと目で上質とわかるクオリティだ。そして目に飛び込んでくるのが、壁にかけられたアートたち。
ここで過ごす時間を豊かにしてくれるあれこれに、目も気持ちも慣れたところで、いざ2階へ。広々としたギャラリースペースが現れ、さらなるアートが迎えてくれる。もちろん作品は実際に購入できる。敷居が高すぎると感じる人には、アートをモチーフにしたアイテムや作品集の販売もある。そう、この場所が提供してくれるのは、コーヒー一杯から始まるアート体験なのだ。
【最初の画像】
撮影時の2階の展示は「北欧デンマークのヴィンテージ家具工藝展」。アーティスト谷﨑一心さんの油彩作品とともに静謐さを感じる空間に並び、アートもヴィンテージ家具も互いを引き立て合っている(現在は別の展示を開催)。
【画像1】
撮影時の1階のカフェでの展示は、イラストレーターkilldisco氏の個展「Happenstance」。カフェという身近な場所に、入手しやすい小ぶりな作品も並ぶので、ふらっと立ち寄った人が購入することも(現在は別の展示を開催)。
「美術館よりは気軽に、でもギャラリーよりは濃密にアートと向き合える空間をつくりたかったんです。カフェという日常に近い空間で、ゆったりと作品を見られる新しい場を」と話すのは、Lurf MUSEUM運営責任者の松川直仁さん。
立ち上げ&運営メンバーは、それぞれの得意分野の中でアートと関わりを持ってきた、若い人材。カフェなど、初挑戦分野に関しては学びを深めつつ、理想とする空間づくりを追求。ゆえにオープン半年ながら、10代~60代以上の人たちが幅広く集まる場に育ってきている。
「きっかけはコーヒーでも、北欧家具でもいい。いろいろな切り口をつくることで、間口が広くなります。コロナ禍を経て、オンラインの利便性は理解しつつも、逆にその場にいなければ体験できないことこそが貴重と実感された方も多いはず。だから、ここではライブでリアルな体感の場を提供したいんです」
美術館で絵画鑑賞はしても、購入となると縁遠かった人が、居心地のいいカフェに絵が展示されていることで、家にアートのある様子がイメージできて購入に至る。アートに一切興味がなかった若者が散策ついでに覗き込んだらアートのおもしろさに気づき、絵は買えないまでも、作家のオリジナルグッズを手に入れることでアートを身近に感じる。そんな声も実際に届いているという。
「紹介するアーティストもコンセプトも決め込まず、自由に幅広くやっていきたい。常にオルタナティブな空間でありたいですね」
【画像2】
カフェカウンターの家具まで北欧ヴィンテージというぜいたくさ。照明は、ポール・ヘニングセン。一角には、ミュージアムショップのような場所があり、アーティストの関連グッズ(ポスター、Tシャツやマグカップ、作品集など)が購入できる。本物だけでなく、予算に応じてワクワクを家にまで持ち帰ることが可能。
Lurf MUSEUM
所在地:東京都渋谷区猿楽町28-13 Roob1-1F・2F
営業時間:11:00~19:00(カフェのラストオーダーは18:30) 不定休
入場無料・事前予約不要
https://lurfmuseum.art/