東京感動線

「夜」の過ごしかたの概念
ナイトタイムエコノミーとは
032

この記事をシェア

お気に入りに追加する

一般社団法人
渋谷未来デザイン

一般社団法人
渋谷未来デザイン 理事
金山淳吾さん
金山淳吾さん
ライフスタイル
Scroll

「夜の楽しみ方はひとつではない」

『ナイトタイムエコノミー=夜の経済活動』だが、そういわれてもピンとこない人もいるだろう。
そこで、渋谷のナイトタイムエコノミー振興とモラル向上を目指すプロジェクトを展開する渋谷未来デザインの金山淳吾さんに、ナイトタイムエコノミーの概念について、そしてなぜいま、日本で注目されているのかをうかがった。

――ナイトタイムエコノミーとはどういう考え方なのでしょうか。

日本は、観光立国に向けて、海外からより多くの観光客を呼び込み、その消費を増やそうとしています。
観光客一人あたりの消費額を見ると、一番高いのは交通費、2番目が宿泊費です。その次に食べたり、遊んだりにかかる費用がくるわけですが、インバウンドではこの消費額が少ない。
例外的に、アジアからの観光客の爆買いがありますが、それもある程度落ち着いたときに、どうやって消費額を増やすかということが課題になっています。
その中で、観光客の日中の過ごし方のパターンは、ある程度決まっているけれども、その前後の時間帯、特に夜の過ごし方が注目されるようになりました。たとえば夕食後にもう1軒、BARで飲んだり、舞台を観たり、アートを楽しんだり。
海外からの観光客にあともう1~2時間、活動してもらうことがインバウンド消費につながります。そうして消費を誘発する夜の時間を増やそうというのがナイトタイムエコノミーの考え方です。

ただ実際問題として、海外からの観光客のアンケート調査などを見ると、日本の夜はおもしろくないという意見が多い。
日本に住んでいる人たち、働いている人たちにとっては、そんなことはないと思うのですが、海外からの観光客の場合は、日本の日常の慣習とはまた違う、非日常の観光体験を求めてやってきます。
それなのに“せっかく来たのに夜に何をしていいのかわからない”となってしまうのです。つまりしっかりプロモーションされていない、伝わっていないということ。そこをしっかり顕在化していこうと、官公庁や各自治体が取り組んでいます。

「安全・安心は前提」


――金山さんが11月に渋谷で開催を予定している「WHITE NIGHT WEEK」もその延長線上にあるということですね。

そうですね。夜、街に出てみようということをコンセプトに、夜の楽しみ方が多様であることを伝えたいと思っています。
夜のエンターテインメントを考えるとき、大きい転換期のひとつに、2016年に風営法が改正されたことがあると思います。
規制が緩和されたことで、それまでグレーゾーンに分類されていたクラブや遊興施設が法律の枠内でビジネスをできるようになりました。
そのこともあって、夜のエンターテインメントというと、それは法的に問題がないのか、本当に安全なのかといったリスクマネジメントに目がいきがちです。
もちろん安心・安全は絶対の前提条件ですが、夜のエンターテインメントといっても、クラブ業界だけの話ではないということをきちんと伝える必要があると思っています。

夜とひと口にいっても長い。僕の勝手な分類ですが、夕食以降を夜だとして、17時から20時、20時から23時、23時から2時、2時以降と分かれるんじゃないかと思っています。
夜には、散歩できる時間帯もあれば、お酒を飲んだり、歌ったり、踊ったりを楽しむ時間帯もある。
そして、アートに触れたい、観劇したいなど、ニーズもさまざまなはず。
そうした夜の文化振興、経済振興について議論する一週間、それが「WHITE NIGHT WEEK」です。

「日本の夜を豊かに」

――どういったコンテンツを予定しているのでしょうか。

あくまでも予定ですが、クラブ空間でのキックオフパーティのようなものや、ライブハウスなどのエンターテインメントサイトのサーキットプログラムとして、定額でいろいろな場所に足を運んでもらう仕組みを考えたり、街中でのアートプロジェクトとして、サーカスのようなショープログラムを開催する実験をしたりしたいと考えています。

それから、渋谷の夜景を再デザインするプロジェクトを立ち上げようと思っています。
日本は、夜に特化したランドスケープデザインをしていないので、渋谷であれば、いろいろな広告が混在する中、店のネオンがチカチカしている。
トータルでいうと賑やかでエネルギーがあるなという印象にはなるけれど、夜景としてデザインされていないのが惜しいと思うんです。

実現できるかわかりませんが、具体的には、屋上に光のソリューションを入れていきたいと思っています。
日本の屋上はほとんどグレー一色。渋谷にはこれから、いままで以上に高層のビルができてくるので、そのルーフトップから見たとき、きちんとデザインされたきれいな夜景をつくりたいと考えています。

――そうして先進的なプロジェクトを進めるにあたって、渋谷の街ならではのメリットやデメリットを教えてください。

渋谷は、文化的感度の高い人が集まりやすい街。
感性が若々しく、夜の楽しみ方も知っている。
いろいろな意味で人生を豊かにしたいと思っている人たちの多さがアドバンテージだと思います。
一方で、先鋭的な議論をしたり、いろいろな人がいろいろなアイデアをテーブルに出したりしていることが、意図しない形で伝わってしまうと、 渋谷=無法地帯のようなイメージをもたれやすい。
その顕著な例がハロウィンでしょう。イベントとしてやっているわけではないのに、人が自然に集まってきてしまう。そういう特殊な街ですから、夜の多様な楽しみ方を考えるにあたっては、当然ながら徹底した安心・安全が前提条件になります。
僕は渋谷区の住人で、僕の子どもにとって渋谷はふるさとです。
いまの仕事は、子どものふるさとを豊かにするために、これまでのすべての経験を生かしたいという想いからはじめました。
自分の子どもが、夜も安全に遊べる街にしたいですし、親として安心して送り出せる街にしたいと思っています。

WHITE NIGHT WEEKでは、日本の夜を安全に豊かにしている人や団体、モノや技術、イベントやプロジェクトといったものを表彰するアワードをつくりたいとも思っています。

「未来の文化を可視化」

――日本におけるナイトタイムエコノミーの先鞭をつけるのが渋谷ということになりそうですね。その渋谷で、9月には、昨年に続き「SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA」(以下SIW)も開催されます。このイベントが生まれたきっかけを教えてください。
原点にあるのは、渋谷におけるシビックプライドを可視化し、主体性をもって参加する仕組みをどうやってつくれるかということ。たとえばアメリカ・オースティンの「サウス・バイ・サウスウエスト」、フランス・カンヌのカンヌ国際映画祭や「カンヌ・ライオンズ」、イタリア・ミラノの「ミラノ・サローネ」など、成熟した文化都市には、人が目的をもって集まる仕組みがあります。渋谷にもそういうシティプロジェクトをつくりたいと思ったのがきっかけです。

シティプロジェクトには、ブルースと縁の深い地であるオースティンでもともと音楽フェスとして立ち上がったサウス・バイ・サウスウエストのように、街の歴史や文化を踏まえて生まれたものと、カンヌの素晴らしい環境の中で広告について語るカンヌ・ライオンズのように、直接のゆかりはないものの、その街がもつ魅力によってその地で開催されているものという、ふたつがあると考えています。では、渋谷のシティプロジェクトは、どちらに寄せるのかと考えたときに、歴史や文化をベースにすると音楽やファッションになるけれどミラノのファッションウィークなどの価値をまとうのは非効率です。それよりも、これからの文化を可視化するプロジェクトのほうがいいと考えました。
渋谷区は、2015年に基本構想を「ちがいを ちからに 変える街。」につくり直し、ダイバーシティ&インクルージョンを政策の最上位概念においてまちづくりをしています。渋谷区が掲げるダイバーシティ&インクルージョンは、いろいろな人が関係をもったり、価値観をたたえ合ったりすることで未来を豊かにすることととらえています。社会や人生を豊かにするための考え方をもっている、行動・活動している人や企業を集めて、ショーケーシングするプロジェクト、それがSIWです。

「新しい価値観が新しい社会をつくる」

――今年のテーマ、「新しい価値観 〜The New Rules〜」について教えてください。

ルールというと、規制や規律と訳されてしまうけれども、SIWでは、ルールとは価値観であると読み解いています。
自分が思い描くように生きたいし、幸せになりたいと思っても、夢はなかなかかなわないというのが現実でしょう。
でも新しい価値観によって、夢をかなえる可能性は高まります。たとえば、子どもの頃からプロのサッカー選手を目指してきたけれども、Jリーグの選手になれるのはひと握り。
ところがJリーグシステムのほかにも、フットサルというルールフォーマットで、再び夢を抱くことができます。
最近ではさらに、サッカーボールを使ってパフォーマンスをするフリースタイルフットボールというルールフォーマットもあり、日本人が世界チャンピオンになっています。
SIWでは、そうして自分がやりたいことを新しい価値観でデザインすることで、夢をかなえたスポーツ選手やクリエイター、起業家など、いろいろな方の視点から学んでいきたいと思っています。

――今年のSIWには、LEARNING(ラーニング)、NETWORKING(ネットワーキング)、EXPERIENCE(エクスペリエンス)という3つの柱があるとうかがいました。
その中心となるのはLEARNING、つまり学びの場です。ソーシャルイノベーションというキーワードの下に、国内外の有識者を招き、多様な未来の可能性を探るトークセッションを行うほか、昨年同様、新しい視点や発想で社会を変えようと取り組む人やプロジェクトを表彰します。

NETWORKINGは、いろいろな働き方をしているチーム、シェアリングエコノミーの可能性を追求している人たち、新しいアートプログラムをつくっているクリエイターなど、渋谷だけではなく、日本中そして世界中にあるいろいろなコミュニティの人が自由に交流できる場という意味です。オープンイノベーションにつながるきっかけづくりの機会にしてほしいと思っています。
EXPERIENCEは、新しい未来を見せてくれるような新しい技術に触ったり、体験したりできる場と考えています。子どもから大人まで楽しめるプログラムを展開する予定です。

また、民意の積み上げによってサッカースタジアムの建設を目指す「スクランブルスタジアム」構想の中間発表も行う予定です。

新しい価値観が新しい社会をつくることをテーマに、さまざまなコンテンツが展開されるSIW。ぜひ足を運んで、新しい価値観が生まれる感動、そしてそこからつながる新しい未来を予感・体感してほしい。

夜の楽しみ方の多様性を議論し、提案する場 WHITE NIGHT WEEK

2019/11/1(金)~11/8(金)に、夜の文化と経済の振興を目的に、食やアート、演劇など夜のエンターテインメントの多様性について議論し・提案。
体験型の実験(イベント)を通してその可能性を探り、文化としての定着を目指す。夜景再生プロジェクトも発表予定

昨年のSIWは、ソーシャルイノベーションをキーワードに開催。「本質」をテーマにしたトークセッションでは50名以上が登壇した
新しい価値観で多様な未来について考える SOCIAL INNOVATION WEEK SHIBUYA 2019

2019/9/11~9/22に、渋谷~原宿〜表参道エリアを中心に、商業施設やイベントスペースなど多拠点で、トークセッションやプレゼンテーション、体験プログラムを開催する都市回遊型イベント。今年のテーマは「新しい価値観 〜The New Rules〜」

一般社団法人
渋谷未来デザイン 理事 
金山淳吾さん

金山淳吾さん

2001年、早稲田大学卒業後、電通に入社。10年に音楽業界へ転身、15年に独立。16年より渋谷区観光協会代表理事を務める。17年、EVERY DAY IS THE DAYの設立メンバーとして参加

この記事をシェア

お気に入りに追加する