NPO法人
全国こども食堂支援センター・むすびえ
理事長 湯浅 誠さん

「こども食堂の共通点は、“子ども”と“食”です。子どもを中心に置いた多世代が交流する場で、僕たちはこれを“共生型”と呼んでいますが、全国に約4000カ所あるこども食堂の約8割が、誰でも使えるオープンな運営をする共生型のこども食堂になっています」
こう説明するのは、社会活動家で、全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長の湯浅誠さん。
「むすびえ」は、日本各地のこども食堂や企業・団体との連携などプラットフォーム的な役割を担い、こども食堂の社会インフラ化を目指して2018年に発足した。
湯浅さんは「学校と同じく、課題のある子もない子も行くことができる場所がこども食堂です。
なので、全国の小学校と同じ数の2万ヵ所の設置を目指しています」と話す。
こども食堂は「地域交流の拠点づくり」と「こどもの貧困対策」の両輪を目的に、民間発の活動としてスタートした。2012年から「こども食堂」の名称が使われ始め、地域のすべての子どもやその親、大人など、対象を限定しない交流拠点として、その活動内容は多岐に渡る。
経済的に困窮した子どもの食事支援だけを目的にしていないのには理由がある。貧困対策を前面に出しすぎると「特別な目で見られている」と感じる子の足が遠のいてしまうからだ。誰もが集う地域コミュニティだからこそ、社会に雲隠れする課題のある子どもたちにも手が届くというわけだ。
湯浅さん自身も幼いころに、周囲からの特別な目に対する苦い経験があるという。
「ハンディのある兄の車いすを押していた時のことです。兄は人のいない方へ行こうと指示するのです。兄は自分に注がれる視線に人一倍敏感だったのでしょう」と振り返る。
こども食堂は「誰も取りこぼさない共生社会」を実現するために、多世代が食事や語らいを通じて交流できる場となっているのだ。
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子どもを対象に食を提供するのが「こども食堂」の目的だが、運営スタイルはさまざま。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、こども食堂を取り巻く状況も一変した。
全国の学校が休校となるなかで、約半数のこども食堂は「フードパントリー」と呼ばれる弁当や食材の配布に切り替える形で運営を続けた。
湯浅さんは「こども食堂の臨機応変さとたくましさの本領が発揮されました。
平時からこども食堂を通じて、地域が子どもや家庭の様子を気にかけていたことが大きいと思います」と評価する。
フードトラック(キッチンカー)の導入など、こども食堂に新たな取り組みが生まれる一方で、フードパントリーを続けるには、通常のこども食堂の運営の2倍の経費がかかるという課題もある。
「お金がなくてこども食堂が潰れた、ということがないように」(湯浅さん)と、むすびえでは、こども食堂の活動支援のためのクラウドファンディングを実施している(「こども食堂基金」で5万人の子に食を)。
今回のコロナ禍では、孤食や困窮など「食」を取りまく問題も浮き彫りになった。しかし、湯浅さんは言う。
「日々の暮らしや家族、自分が生活している地域のつながりを見つめ直す機会かもしれません。数年後にコロナ禍で得たものもあったよね、と振り返れるような社会をつくるチャンスです」
人々の暮らしに密接に関わっているからこそ「食」は時代を如実に映す。
明るい言葉で表現される「食」の未来は、私たち一人ひとりが“誰も取りこぼさない共生社会”を創る意識を持つことから始まりそうだ。
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「こども食堂では、ほかの学年の子とも遊べる」と子ども達からも好評だ。
NPO法人 全国こども食堂支援センター・むすびえ
所在地:東京都渋谷区代々木2-12-2 こども食堂ネットワーク内
Tel:03-4213-4295
https://musubie.org/