株式会社フーディソン 代表取締役CEO
山本 徹さん

03年、高齢社会に適した情報インフラの構築を手がける株式会社SMSの創業メンバーとして、人材マネジメント、新規事業開発に携わる。
2013年4月、株式会社フーディソンを創業し、代表取締役CEOに就任。
新型コロナウイルス感染予防の目的で、多くの飲食店が営業自粛や時短営業を余儀なくされた。飲食店で使われるはずだった水産物も行き場を失い、生産者は漁に出るのをためらう事態に陥った。
一方、“巣ごもり需要”により、家庭用の上質で安全な食材のニーズは高まっている。
これらをマッチングさせ、生鮮食品を一般の消費者にドライブスルー形式で販売したり、ネット上のマルシェで流通させたりするベンチャー企業がある。生鮮品の卸・小売を手がける株式会社フーディソンだ。
「これまで主に飲食店向けのサービスを展開する中で、少量多品種の魚を扱い、独自の流通を手がけてきたノウハウが役に立ちました。需要に対して新しいサービスを提供することで、産地にも貢献できたと思います」と、代表取締役CEOの山本徹さんは話す。
フーディソンが現在展開する事業の柱は大きく三つある。
一つ目は、飲食店専用の生鮮品仕入れサイト「魚ポチ」の運営。二つ目は、“いつも新しい発見のある街の魚屋”をコンセプトとした鮮魚店「 sakana bacca(さかなばっか)」、そして、飲食業界向けの 人材紹介サービス「フード人材バンク」だ。
山本さんは「日本の飲食店の約90%が個人経営の中小事業者で、オーナーが食材調達から料理、接客までひとりでやっているケースが多いんです。なので、良い魚を仕入れたくても市場に行く時間がなかったり、仮にあったとしても10年間で9割が閉店すると言われる業界ですので、市場での信用力がなく、現金でしか取引ができなかったりするのが現実です」と解説。
「そこで、私たちが市場や産地から調達した鮮度の良い魚を、簡単に仕入れられるツールを作りました」と、「魚(うお)ポチ」の立ち上げ意図を説明する。
フーディソンは、青果、水産物、花きを扱う東京・大田市場に仲卸の店舗を持つ。ここを拠点に市場はもちろん、全国の産地とも直接取引している。また、新幹線を使った鮮魚輸送など、市場と食卓を結ぶスピーディな物流を独自に構築しているため、新鮮で多種多様な水産物を扱うことが可能だ。
こうしたことから、起業から7年で首都圏を中心に約1万5000件の飲食店が「魚ポチ」のサービスを利用。さらに一般の消費者向けの魚屋「sakana bacca」は、中目黒や都立大学、品川駅のエキュート品川など、都内に6店舗を構えるまでに拡大している。
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市場や産地からプロのバイヤーが厳選した鮮魚を取り扱う
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「ドライブスルーうおポチ」は事前決済で、車に乗ったまま商品を受け取れる
こうした中で起こった今回の新型コロナ禍。
フーディソンでは、いち早く「魚ポチ」で扱っていた鮮魚を、「ドライブスルーうおポチ」や「うおポチマルシェ」として、一般消費者に販売し始めた。また、「sakana bacca」の店舗でも事前決済システムを取り入れ、並ばずに商品を受け取れるなどの対策を講じた。
「『ドライブスルーうおポチ』は、開催する度に売り切れとなるなど、好評をいただきました。また、飲食店という出口を失って行き場がなくなり値崩れした鮮魚が、需要ができたことで相場が通常に戻るなど、健全な水産流通の一助になったと思います」と山本さん。
さらに、山本さんは言う。「1尾いくらの特売ベースだけでは、これからの水産流通の未来はありません。消費者が、産地で感じられる当たり前の旬や美味しさと気軽に出会えるよう、既存の流通システムを使いながら、現代のニーズに合ったソフトウェアを創ることが我々の使命だと思っています」
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エキナカに店舗があるため、仕事帰りに鮮度が良くて、珍しい種類の魚が購入できる「sakana baccaエキュート品川」
株式会社フーディソン
所在地:東京都中央区勝どき3-3-7ケンメディアビル5階
https://foodison.jp/