東京感動線

行き場を失ったビールをクラフトジンに再生
環境と共生するまなざしが飲食店支援に
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SAVE BEER SPIRITS

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フクロウマークのクラフトビールとして世界的に知られる「常陸野ネストビール」を造る木内酒造が、新型コロナウイルスの影響で苦しむ飲食店の支援を続けている。店の在庫となってしまった樽生ビールを無料で蒸留し、クラフトジンとして店に返す「SAVE BEER SPIRITS」プロジェクトに4月から取り組む。
「自粛や休業、時短営業をする飲食店から、仕入れた生ビールが賞味期限を迎えてしまい、廃棄せざるを得ないという悲痛な声があがっていました。ビールとしては味わえませんが、蒸留すればお酒の賞味期限を延ばすことができます。このような状況下で打撃を受けている飲食店に、酒造メーカーとしてできる支援をしたいと」と話すのは、製造長の谷幸治さん。
樽生ビールは合計20リットル以上であれば、木内酒造以外の商品でも受け入れ、蒸留は本格蒸留器のある秋葉原のダイニングバー「常陸野ブルーイング東京蒸留所」のほか、茨城県内の蒸留拠点でも行う。10リットルのビールから約1本(750ml)のクラフトジンができる目安だ。飲食店は、配送料と返送料の負担のみで、余剰ビールをクラフトジンによみがえらせてもらえる。

【最初の画像】
ハイブリット式の蒸留器を併設したダイニングバー「常陸野ブルーイング東京蒸留所」は、JR秋葉原・御徒町駅間の高架下スペース「SEEKBASE AKI-OKA MANUFACTURE」の一角で、2019年12月にオープンした。

【画像1】
ジンの香りづけに使うボタニカルは、定番のジュニパーベリーのほかに、日本の夏みかんや生姜などもテスト中だ。

実は、木内酒造では以前から、ビールを醸造する際に出るビール酵母を廃棄せずに蒸留し、出来たスピリッツで梅酒を仕込んできた。谷さんは「ビール酵母は力があるので、そのまま廃棄すると環境への負荷が高いんです。蒸留することでアルコールと水に分解し、環境負荷を下げてから排水するようにしています」と説明する。そして「ですから、私たちはビールを蒸留酒に変えることに慣れていました。ジンは賞味期限が長いので、飲食店にはこのジンをお店でお客さまに楽しんでもらえるよう頑張ってほしいです」とエールを送る。
自然環境を大切にしながら酒造りを行ってきた木内酒造の未来志向の揺るぎない精神。それが、樽生ビールをクラフトジンに変えて飲食店を支援する今回のプロジェクトにつながったのだろう。

【画像2】
木内酒蔵の樽出しウイスキーの飲み比べやジンを楽しめるほか、茨城産の銘柄牛や銘柄豚、鶏肉でつくるシャルキュトリも味わえる。

アクセス

常陸野ブルーイング東京蒸留所

所在地:東京都千代田区神田練塀町13-1
Tel :03-3527-1977
営業時間:11:00~23:00(L.O.22:30)、日祝11:00~22:00(L.O.21:30)
*営業時間は要問合せ

http://hitachino.cc/tokyodistillery/index.html