東京感動線

下町情緒が残る谷中のまちから、
フランス人日本茶インストラクターが伝える
シングルオリジンのお茶の味わい
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青鶴茶舗(aozuru cha ho)

フローラン・ヴェーグさん
フローラン・ヴェーグさん
まち
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ワインのように個性豊かな
シングルオリジンの日本茶

日暮里の駅からも西日暮里の駅からも、歩いて10分ほど。江戸時代からの寺町である谷中に日本茶と急須の専門店「青鶴茶舗」はある。谷中は戦災を免れた地であり、寺院のほかにも古い木造家屋の商店や住宅が残っており、細い路地を歩けば、江戸、明治、大正、昭和…と続く歴史の流れと、東京の暮らしを肌で感じることのできる場所だ。
「青鶴茶舗」の店主、フローラン・ヴェーグさんは、フランスの大学で日本美術史を学び、2005年に来日。「フランスでも日本茶を飲んだことはあったのですが、日本の百貨店の物産展で飲んだお茶がとてもおいしくて、それはまったくの別物でした」とヴェーグさん。以来、日本茶に深く魅了され、2009年にフランス人初の日本茶インストラクターの資格を取得する。老舗日本茶専門店で知識や接客の技術を磨き、ブログでも日本茶の魅力を発信。2011年にオンラインで「青鶴茶舗」をスタートさせ、2018年、念願の実店舗のオープンに至る。
「青鶴茶舗」で扱うのは“シングルオリジン”と呼ばれる、単一農園・単一品種のお茶。ヴェーグさん自ら日本各地の産地や工場に足を運ぶことも多く、厳選した煎茶のほか、釜炒り茶、玉露、抹茶、紅茶も扱う。「同じ品種でも産地や作り手、作り方によって、香りや色、味が異なり、さらには作られた年の天候でも変わります」。シングルオリジンのお茶にはそれぞれに個性があり、ワインによく似た嗜好品としての魅力がある。

【画像1】
急須から茶海に移し、静かに茶碗に注ぐ。同じ茶葉でも、お湯の温度や蒸らす時間などで風味が変化する。お湯をわかす、お茶を淹れて少し待つ、色を愛で、香りを楽しみ、味わう、それらの時間の豊かさも、日本茶の魅力のひとつ。

自分好みのお茶や急須との出逢いが
日本茶の世界を深めていく

好みを伝えれば、おすすめのお茶を提案してもらえるだけではなく、試飲や淹れ方のアドバイスも受けられる。売り場の商品カードやパッケージには、うま味や渋み、コク、風味の特徴がひとめでわかるように表記。茶葉やお湯の量、温度、蒸らし時間といった、おいしく淹れるための目安も書かれており、日本茶に初めて出逢う人にもうれしい配慮がされている。ヴェーグさんは「ただ、これが正解というわけではないので、いろいろと試して自分の好みをみつけてほしいですね」と言葉を添える。
飲食店やコンビニエンスストアのペットボトルなど、まちで気軽に出逢うことのできる日本茶。でも、その奥行きは果てしない。「最近は、茶葉の選別や火入れといった仕上げの工程まで行う生産者も増えていて、より個性的で多彩になっています」とヴェーグさん。こちらのお店では、日本茶を淹れるのに欠かせない、急須の品揃えも充実。急須の産地として知られる常滑焼の作家ものを中心に、さまざまな色や形の急須が並び、お茶同様にその特徴を知り、自分好みのものを探す楽しさがある。
「いつか、近くに仕上げの工場を持ちたい」というのがヴェーグさんの夢。こだわりが詰まったヴェーグさんのお茶が、日本茶の魅力をさらに深めてくれるのは間違いないだろう。

【画像2】
日本茶になじみのない海外の方へのおすすめとしてヴェーグさんが選んだのは滋賀県の「朝宮煎茶 山峡(やまかい)」。甘い香りを持ち、うま味と渋みのバランスのよさが特徴。
【画像3】
美しくディスプレイされた急須。丸くコロンとしたものから、平べったいものまで、形も色、質感もさまざま。茶葉に合わせた急須の選び方もアドバイスしてくれる。

アクセス

青鶴茶舗
所在地:東京都台東区谷中3-14-6 海野ビル104
営業時間:11:00~17:30 水曜定休
電話番号:03-5842-1315

○シングルオリジンの煎茶を中心に、釜炒り茶、抹茶、紅茶なども扱う。事前に予約をすれば、少人数での日本茶について学ぶセミナーを行うほか、海外通販にも対応。
https://www.thes-du-japon.com/