朝倉氏の名刀
令和に現る

室町時代中頃から約100年にわたり越前を治めた朝倉氏ゆかりの名刀「朝倉長光(あさくらながみつ)」。鎌倉時代に活躍した名刀工・長船長光(おさふねながみつ)が手掛けた一振りである。朝倉氏の拠点だった一乗谷が、織田信長に敗れて焼き払われた時に奪われ、最終的に豊臣秀吉の手に渡ったが、大坂夏の陣で焼失してしまったと考えられる。現代になって、一乗谷朝倉氏遺跡資料館がこの幻の名刀の全体像を写した刀絵図を探し出し、復元プロジェクトを立ち上げた。

復元を担当したのは、権威ある刀剣コンクールで最高賞を受賞した福井県在住の刀工・森國清廣(もりくにきよひろ)さん(写真)。資料館とともに森國さんは復元に挑み、ついに渾身の一振りを作り上げた。森國さんは復元の話を聞いた時、名刀工・長光の名刀だったために正直ひるんだというが、こんなチャンスはもうないと奮い立ち、最善を尽くそうと決めた。その後、文献や資料を読んだり、東京・両国の刀剣博物館に長光が打った刀を見に行くなど、研究を重ねたという。

鉄の塊から鍛錬を繰り返し、形となった刀身には、刃をつける部分には薄く、他には厚く土を塗り、熱してから一気に冷やす「焼き入れ」を行う。土の薄い部分は急速に冷え、組織が固く変化し、刃文となる。絵図の通りに土を塗っても意図した通りになるとは限らない。森國さんは祈るような気持ちだったそうだ。今回のチャレンジで長光のすごさに改めて気づいた森國さん。名刀に近づきたいと強く思うようになったという。写真は森國さんが復元した朝倉長光。