トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2020年1月 富山/石川/福井/北陸

2020年 1月号 特集
“達人”に教わる、北陸の旅

独自の視点で全国各地を旅してきた“城の達人”“目利きの達人”“鯖の達人”の案内で、冬の石川県、富山県、福井県を旅した。それぞれのテーマを掘り下げることで、土地の歴史や文化、そこに生きる人々の思いが浮かび上がってくる。達人の旅には、今まで気づかなかった北陸の魅力や旅そのものの面白さが詰まっていた。

福井・鯖の旅

池田陽子さん

食文化ジャーナリストの池田陽子さんは、全国的に親しまれている鯖をこよなく愛し、鯖料理や鯖にまつわる文化に詳しい。人呼んで、サバジェンヌ。池田さんと共に、バリエーション豊富な鯖グルメがあるという福井県各地を訪ねた。福井県では古くから鯖が多く獲れたため、「鯖街道」と呼ばれるルートを通ってその鯖が京都まで運ばれていた歴史がある。福井県小浜市にある「若狭小浜お魚センター」には、鯖をはじめさまざまな魚介が並んでいた。

「朽木屋」店頭に並ぶ浜焼き鯖

串に刺して一尾丸ごと焼いた「浜焼き鯖」は、福井県ではポピュラーな料理。鯖は傷みやすい魚だが、焼けば日持ちしやすくなる。かつて鯖が多く獲れた若狭湾を擁する小浜市でも、古くから親しまれてきた鯖の調理法だ。小浜の老舗鯖専門店「朽木屋」の店頭には「浜焼き鯖」がずらりと並ぶ。余分な脂を落としながらじっくりと焼き上げられ、ジューシーな身が味わえる。

小浜よっぱらいサバの姿造り

福井県で多く獲れていた鯖も、現在ではかつてほど多く獲れることはなくなってしまった。小浜市では2016年から「鯖、復活プロジェクト」を発足し、養殖のブランド鯖である「小浜よっぱらいサバ」を誕生させた。京都の酒蔵で出来た酒かすを餌に混ぜて育てた鯖は、脂はのっているけれど、くどさはなく、あっさりとした味。小浜では新鮮な刺し身(姿造り)で味わうことができる。