金沢・歴史旅

城郭ライターの萩原さちこさんは、約1400もの日本の城を巡ってきた達人。そんな萩原さんの一押しが、戦国時代に成立した加賀藩前田家の居城「金沢城」だ。幾度も修築を繰り返し、多様な年代や様式の石垣が見られることから、 別名“石垣の博物館”と呼ばれている。また城の壁や窓、瓦などに施された独特な装飾にも着目。城郭を巡りながら、前田家の洗練された美意識に触れていく。

石垣には、さまざまな種類がある。金沢城で代表的なのは「切石(きりいし)積み」という、不規則な石をきれいに削り、隣接部を寸分の隙間なく接合していく積み方。橋爪門続櫓(つづきやぐら)のものは、色彩豊かな戸室石をバランスよく組み合わせていて、美しいモザイク模様を描き出している。萩原さんによると「金沢城の石垣には前田家の築城技術の高さとセンスの良さが表れている」そうだ。

城下町にまで足を延ばすのが、萩原さん流の城歩きだ。金沢城の西側にある長町は加賀藩士の屋敷が軒を連ねていた場所で、武家屋敷の風情が今も残る。金沢市内最古級の大野庄用水も流れている。「武家屋敷跡 野村家」は往時の面影を残す日本庭園と豪商の邸宅を移築した主屋、増築された茶室が見事に調和した美しい空間だ。「用水を引き入れて庭園の曲水にするなんて、粋!」と萩原さん。