高岡・工芸旅

河内宏仁(ひろのり)さんは、日本全国をめぐって工芸品をインターネットで販売する「リアルジャパンプロジェクト」を立ち上げた、工芸品の目利きの達人。現地で心引かれた品を見つけては、工房や職人を訪ねて回ったという。伝統工芸を、どんな人が、どんな技術で、どのような思いを込めて作っているのかに興味を引かれるという河内さん。鋳物発祥の地で、風情ある街並みが残る金屋町の「大寺幸八郎商店」には高岡の工芸品が集まっていた。

河内さんが注目している高岡の工房の一つが「モメンタムファクトリー・Orii」。高岡では分業制で作られてきた銅鋳物の「着色」の工程を担ってきた工房だが、4代目の折井宏司さんは、伝統技術を独自にアレンジして薄い銅板を美しい模様に着色し、建材や日用品を生み出した。独自技法は企業秘密ということで、基本となる伝統的な着色技法を見学。銅板に糠を塗って焼き上げ、化学薬品を使って着色していく工程は、まるで魔法のようだった。

もう一つ、河内さんが連れて行ってくれた工房が「シマタニ昇龍工房」。代々、寺院用の大きなおりん「鏧子(けいす)」を手掛けてきた。銅合金の真鍮を金槌で繰り返し叩いて形を調整し、美しい音を生み出すのが鏧子職人の技。4代目の島谷好徳(よしのり)さんは、他分野への技術活用を模索し、薄い錫(すず)板に叩いて美しい模様をつけた「すずがみ」を開発した。自由に曲げて、お皿や小物入れなどに使える日用品として、人気を集めている。