JR東日本からのプレスリリースを年度別に掲載しています。(JR東日本広報部)
2005年10月19日
東日本旅客鉄道株式会社
 
大規模地震に対する当社の取組みについて

 2004年10月23日に発生した新潟県中越地震において、当社はトンネルや橋脚の損傷、軌道の変状、橋梁・高架橋の沈下、電柱の傾斜、消雪基地の破損、そして上越新幹線「とき325号」の脱線等大きな被害を受けました。
 以後、当社はこの地震の教訓を活かし、今後発生しうる地震における被害をより軽減させるため、構造物における各種調査と耐震補強計画の策定やその前倒し実施、地震発生時に1秒でも早く列車を停止させる取組み、新幹線の脱線現象の解明と対策の検討等を行ってまいりました。
 この度、新潟県中越地震の発生から1年を迎えるにあたり、今までの取組みや今後の対策等についてまとめました。

1. 耐震補強対策の進捗状況について
 当社は1995年の阪神・淡路大震災、2003年の三陸南地震をふまえ、対策が必要な新幹線のラーメン高架橋柱18,500本、在来線のラーメン高架橋柱12,600本を対象に耐震補強を行ってきています。

(1)新幹線
 新潟県中越地震発生時18,500本中44%にあたる8,100本の耐震補強が完了していましたが、今年9月末現在では総数16,500本、89%が完了となっています。高架下が未利用となっている箇所の耐震補強工事は既に9月末で完了させており、高架下が駅ビル、店舗、事務所等建物に利用されている箇所のうち残る2,000本についても、当初計画を1年前倒しし2007年度末までに補強工事を完了させます。
(2)在来線
 現在、高架下が利用されている箇所の耐震補強工事を実施中であり、現在総数10,000本、対象本数の79%が完了しています。残る2,600本についても2008年度末までに補強工事を完了させます。
詳しくは資料1をご覧下さい
2. 新潟県中越地震による被害類似箇所の対策について
(1)活断層に近接する新幹線トンネルの耐震補強
 新潟県中越地震では、覆工コンクリートの崩落や軌道隆起等の被害が発生したことから、昨年12月より「新潟県中越地震鉄道トンネル被害原因調査等検討会(委員長:京都大学大学院 朝倉俊弘教授)」において、被害原因の究明及び鉄道トンネルの耐震対策の検討を行ってきましたが、その検討結果をもとに新幹線トンネルの耐震対策を進めることとします。
 具体的には、活断層から水平距離で概ね5Kmの範囲内にある新幹線トンネルを対象に、地質条件、構造条件等から必要な対策工事内容と対策区間を選定するという考え方に基づき、今後トンネル耐震計画を策定することとします。
(2)活断層と交差する新幹線トンネルの補強対策
 活断層と交差する新幹線トンネルのうち、調査結果から2つのトンネルについて背面空洞への裏込め注入工を今年度中に実施します。
(3)第3和南津高架橋類似箇所対策
 高架下利用の建物が高架橋柱の中間部を拘束したことが原因となって第3和南津高架橋が損傷したことから、これに類似する新幹線高架橋柱91本について2006年度末までに補強を実施します。
詳しくは資料2をご覧下さい
3. 新幹線早期地震検知システムの改良等について
地震発生時に、より早く地震を検知し新幹線を止める「新幹線早期地震検知システム」について以下の改良を進めています。
(1)運転規制の判断指標の変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今年9月で完了済
(2)地震規模等の推定方式の変更・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 今年度末完了予定
(3)地震規模に合わせた範囲の送電停止機能の追加・・・・今年度末完了予定
(4)沿線地震計の増設・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2006年度末完了予定
また、新幹線車両については、停電を検知してからブレーキ指令を出すまでの時間を2秒から1秒程度に短縮する方式を検討しています。
詳しくは資料3をご覧下さい
4. 信濃川発電所設備被害の復旧状況について
 千手(発電機5台)、小千谷(発電機5台)、新小千谷(発電機2台)の3つの発電所と3つの調整池、水路トンネル等からなる信濃川発電所は、調整池や電力設備に被害を受けました。特に堤体に被害を受けた調整池については使用できない状態が続いており、復旧工事が進められています。今年2月1日より千手の発電機1台、2月28日より千手の発電機2台、4月10日より加えて小千谷の発電機2台を調整池を使用しない方法で稼動させていますが、今年度の発電量は通常時の約55%程度になる見込みであり、首都圏の朝夕のラッシュに対応した運転はできていない状況です。
 現在、来春頃に調整池を使用した発電を再開できるよう、復旧に取組んでいるところです。
詳しくは資料4をご覧下さい
5. 新潟県中越地震による新幹線の脱線現象の解明と脱線対策について
 脱線現象のメカニズムを解明するため、社内に上越新幹線脱線調査専門委員会(委員長:常務取締役 田中正典)を組織し調査を進めてきました。
 現在も脱線メカニズムの解明については航空・鉄道事故調査委員会、また施設面、車両面で当面とり得る対策の可能性等については新幹線脱線対策協議会において調査・検討が進められておりますが、現時点での当社の調査結果として、以下のことが推定されています。
(1)脱線は構造物の損傷、沈下が原因でなく、地震動により発生したこと
(2)地震動により11軸が脱線、更に脱線した車輪による軌道破壊も加わり合計22軸が脱線したこと
(3)脱線後もレールにより列車が誘導され、停止するまで列車の姿勢が保持されたこと
(4)レールの接着絶縁継目の破断により、1号車が中央返送水路(上下線路間)に傾斜したこと

 また新幹線脱線対策協議会のもと、脱線対策についても検討を進めていますが、当社として試作段階に入ったのは以下の3件です。
(1)車両ガイド機構
(2)レール締結装置の改良
(3)接着絶縁継目の改良
詳しくは資料5をご覧下さい
6. お客さま救済や情報提供へ向けた取組み
 新潟県中越地震にあたって、被災車両からの避難、誘導等の場面において日頃の訓練等の重要性が再認識されたこと、また被災車両内のお客さまから、「震源の場所」「ご自宅付近の様子」等についての情報提供の要望が強かったことから、
(1)大規模地震を想定したお客さま救済訓練
(2)乗務員の携帯ラジオの携行
(3)新幹線車両への携帯用専用電話(JR電話)の増備
を実施します。(2)については11月以降準備出来次第、(3)については来年3月頃から実施します。
詳しくは資料6をご覧下さい
7. 脱線車両の保存について
 地震による新幹線車両の脱線という未曾有の試練を風化させることなく、今後とも安全を大切にする企業文化を堅持していくために、脱線した「とき325号」の200系車両の一部等を、福島県白河市のJR東日本総合研修センター内に保存することを検討しています。

■参考 新潟中越地震による主な被害状況 [PDF/81KB]

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