トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2021年3月 群馬・埼玉

2021年 3月号 特集
群馬、埼玉。
渋沢栄一を旅する

令和6(2024)年、渋沢栄一と東京駅が刻まれた新1万円札が発行される。幕末から開国、昭和のはじめまで日本の激動期を駆け抜け近代化に奔走した渋沢は、不屈の精神で勝ちを引き寄せ、近代日本経済の父と称されるほどの成功を収めた。ゆかりの地が多く残る群馬、埼玉を旅し、財界人として実業界をけん引した明治期の前半生に迫った。(写真提供/朝日新聞社)

新1万円札誕生!
お金のトリビア

第一国立銀行の社屋の写真

写真は東京の兜町にあった、第一国立銀行の社屋。瓦屋根に塔屋を載せた擬洋風建築である。明治4(1871)年、西欧列強に並ぶ近代国家の樹立を目指す明治政府は、現代の貨幣制度へとつながる新貨条例を制定。その後、アメリカのナショナルバンクの制度を基にし、最終的には153行もの国立銀行を設立した。第一国立銀行はその第1号であり、渋沢は頭取を務めた。その後、兜町は日本を代表する金融街へと変貌していくこととなる。(国立国会図書館蔵)

工芸官の写真

日本の紙幣は、数字や肖像、模様などが非常に細かな線で印刷されている。写真は国立印刷局に所属する、紙幣などの原版彫刻を専門に行う工芸官。現在でも原版は手彫りで製作されており、紙幣が誕生した150年前から引き継がれている技術である。これは凹版(おうはん)彫刻と呼ばれ、偽造防止に有効な超技巧であり、美的効果も併せ持つ優れた伝統技術だ。(写真提供/国立印刷局お札と切手の博物館)

分銅金の写真

分銅金(ふんどうきん)は、日本の貨幣史を物語るお宝だ。16世紀の終わりごろの戦の絶えない時代に、権力者が有事に備え、備蓄用に造らせたという金塊である。尾張徳川家に伝来、戦前に日本銀行が買い入れた。この分銅金の形は現代も銀行を表す地図記号として使われている。時代を超え、分銅はお金を表すアイコンになっているのだ。(日本銀行金融研究所貨幣博物館蔵)