宮泉銘醸、酒造りの信念

全国新酒鑑評会の金賞受賞数で日本一の座に君臨し続ける福島県。県内きっての銘醸地である会津に、「酒造りの求道者」と噂される若き杜氏がいる。宮泉銘醸の宮森義弘さん(写真)だ。元々、東京でシステムエンジニアをしていた彼が、故郷の酒蔵を継ぐ決意をしたのは、都内の料理店で目の当たりにした敬意ある日本酒の扱われ方だった。

当時の蔵の経営状態は厳しく、義弘さんは文字通りゼロからのスタートとなった。そこで、自分の全責任において、納得のいく日本酒を造ることを最優先させると決意。2010年から杜氏と社長を兼務していく中で、覚悟はいっそう濃くなり、どの製造工程にも決して妥協しなかった。例えば米は、ざるに小分けして洗うことで、手間はかかるが一粒一粒の吸水のムラを防げる。そのこだわりは細部にまで徹底している。

震災が起きたのは、義弘さんが社長になった翌年のことだった。原発事故による風評被害は、これまでにない過酷な体験だった。全国からさまざまなかたちの支援が届くことで救われたという。これまで、この蔵を支えてくれたすべての人々へ感謝し、その恩を日本酒の品質を高めることで返したいと、義弘さんは力強く語った。写真は清涼な仕込み水をもたらす磐梯山。