トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2021年1月 栃木

2021年 1月号 特集
いつでも着物を

大正時代に大胆な色柄で一世を風靡した栃木の足利銘仙。100年もの時を経た今、再び古着着物を中心に人気を集め、地元企業が作った足利銘仙の洋服地は、欧米の高級ブランドからも注目されている。さらに、県内で出土した機織形埴輪が国の重要文化財に指定され、栃木の織物にまつわる歴史の深さや、県内で生産される結城紬にも関心が高まっている。栃木で着物の素晴らしさを再発見する旅に出た。

古墳時代から歴史を紡ぐ織物

機織形埴輪の写真

栃木県南部の思(おもい)かわと姿川に挟まれた台地に、6世紀後半に築かれた甲塚(かぶとづか)古墳がある。高級絹織物・結城紬が作られてきた小山市に近いこの場所から、織機と布を織る人物をかたどった埴輪が2基出土した。発掘された機織形埴輪は、現在日本で唯一の出土例である。埴輪で表現されている織機は、今も結城紬に使われている地機(じばた)の原型といわれ、栃木の織物の歴史を物語っている。写真は、埴輪の欠損部分を補い、わずかに残っていた彩色からCG復元したもの。