トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2020年11月 千葉、茨城

2020年 11月号 特集
『更級日記』でめぐる、
千葉・茨城

平安時代の女流日記文学を代表する『更級日記』。作者の菅原孝標女(すがわらのたかすえのむすめ)が『源氏物語』に夢中だった少女時代から晩年までを振り返った自叙伝だが、その舞台に千葉県市原市や茨城県があることはあまり知られていない。孝標女の痕跡を探し、千葉・茨城が栄華を誇った時代に迫った。

平安貴族も楽しんだ
京へと向かう旅記録

石山寺縁起絵巻の写真

孝標女は家族とともに上総国を発ち、京都へと帰っていった。その旅の記録は、平安時代の都の貴族たちを大いに楽しませた。孝標女は足柄峠を越えた辺りで富士山を目にしていた。その描写は美しく、雪が積もった富士山を濃い紫の衣の上に白い衣を着ているように見えると表現し、山頂から煙が立ち上る様子も伝えている。旅の記録が珍しかった時代には貴重な観光記事でもあった。写真は、孝標女の石山寺参詣の様子が描かれた、石山寺縁起絵巻。(大本山 石山寺蔵)