平安貴族も楽しんだ
京へと向かう旅記録

孝標女は家族とともに上総国を発ち、京都へと帰っていった。その旅の記録は、平安時代の都の貴族たちを大いに楽しませた。孝標女は足柄峠を越えた辺りで富士山を目にしていた。その描写は美しく、雪が積もった富士山を濃い紫の衣の上に白い衣を着ているように見えると表現し、山頂から煙が立ち上る様子も伝えている。旅の記録が珍しかった時代には貴重な観光記事でもあった。写真は、孝標女の石山寺参詣の様子が描かれた、石山寺縁起絵巻。(大本山 石山寺蔵)