トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2020年9月 東北

2020年 9月号 特集
『おくのほそ道』
翻訳トラベル

みちのくへの旅をつづった芭蕉の紀行文『おくのほそ道』。今や世界各国で翻訳されている。みちのくの歴史、風物、旅の感動を織り込み、句を詠んだ芭蕉。言語も文化も異なる人々には、芭蕉の句はどう映るのだろうか。米国生まれの翻訳家と日本古典文学研究者が芭蕉の足跡をたどる旅に出た。

世界に広まったHAIKU

野口米次郎氏とエズラ・パウンド氏の似顔絵

俳句をいち早く英米に伝えた日本人がいた。野口米次郎、彫刻家イサム・ノグチの父である。野口は18歳で大学を中退して渡米、著名な詩人ホアキン・ミラーのもとへ押しかけ、住み込み書生となる。そして日本文化に惹かれたミラーに俳句を教えるうち、英語俳句を作るようになった。3行で表現する英語俳句の形式を作ったのは、この野口だ。野口は講演会や執筆活動を通して俳句の魅了を英米に伝えた。アメリカ生まれの詩人エズラ・パウンドはその影響を受け、「地下鉄の駅で」という短い詩を作り、高く評価された。