トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2020年8月 北海道・青森

2020年 8月号 特集
アイヌ民族は交易の民だった

国立アイヌ民族博物館がオープンし、日本の先住民族、アイヌ民族が注目を集めている。最近の研究では、狩猟の民であったという従来の概念を打ち破り、実は「交易の民」として広く活躍していたと分かってきた。その足跡を北海道、青森にたどる。

見つけた!
ここにも、アイヌ!

蝦夷漫画(輪踊り)

江戸時代末期の探検家・松浦武四郎によって1859(安政6)年に編纂された『蝦夷漫画』は、当時の“アイヌ図鑑”の決定版ともいえるものだ。アイヌの服装、芸能文化、生活の様子、利用した植物まで、内容は多岐にわたる。図版は、『蝦夷島奇観』や『蝦夷生計図説』などの挿図をもとに、武四郎が描いたと考えられている。描かれた人物は簡略化されたタッチで親しみやすい一方で、輪踊りの様子を描いた図版を見ると、アイヌがまとった装束の文様全てが異なっているという凝りようだ。
(札幌市中央図書館蔵)

シャーマンキング

アイヌをテーマにした漫画や小説は数多い。漫画界の巨匠・手塚治虫氏の『シュマリ』や、明治時代の北海道と樺太を舞台にした野田サトル氏の『ゴールデンカムイ』、映画化もされた矢野徹氏の『カムイの剣』などが知られる。漫画家・武井宏之さんも、自身の代表作『シャーマンキング』にアイヌのキャラクター“ホロホロ”を登場させた。ホロホロが使う技の名前にはアイヌ語が用いられている。武井さんは青森出身で、幼いころからアイヌの文化に触れる機会に恵まれたという。
『シャーマンキング』©武井宏之/講談社

カムイサウルス

2003(平成15)年、北海道むかわ町で白亜紀後期(約7200万年前)の恐竜化石が発見された。その後、全長8mのうち8割もの骨が発見され、一個体分の全身化石では日本最大級として注目を集めた。2019(令和元)年9月には、“カムイサウルス・ジャポニクス”と命名された。“カムイ”はアイヌ語で神を意味する。「北海道の土地から復活した恐竜なので、学名にその思いを込めるためにアイヌ語を使用しました」と小林快次(北海道大学総合博物館教授)さん。アイヌ文化が日本のさまざまな分野に影響を与えている。