トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2020年5月 伊豆

2020年 5月号 特集
伊豆の街で昭和レトロ浪漫

昭和30年代、団体旅行客や新婚旅行の人々で賑わった熱海や伊東。その喧噪も、ひっそりと静まる時代を迎えたこともあった。しかし今再び、“昭和”の雰囲気を求めて、若者やその親世代まで多くの人が訪れている。活気を取り戻した伊豆の街へ、昭和レトロを味わう旅に出た。

昭和レトロホテル探訪

ハトヤホテル

伊豆半島には昭和の観光客が楽しんだ大型ホテルが、当時の雰囲気をとどめながら残っている。豪華な内装ときらびやかなエンターテインメント性が、最近では若い世代や訪日外国人に人気だそう。昭和レトロブームの一翼を担う、熱海・伊東のレトロホテルを探検する旅に出掛けた。まず訪れたのは、かつて「伊東に行くならハトヤ」のCMでお茶の間に知られたハトヤホテル。瞳のような形の窓が並ぶ連絡通路は、どこか宇宙船を思わせる近未来的なデザイン。昭和の人々が抱いた未来への夢のまばゆさが、若い観光客を引き付けるのだろうか。

ホテルニューアカオ

次の行き先は、熱海の海沿いに立つホテルニューアカオ。海に映えるポップなロゴのイメージに反して、内装はレトロゴージャス。美しい青の大理石ブルーオニキスをふんだんに用いた柱や、スワロフスキーの巨大なシャンデリアなど、見どころは尽きない。赤いじゅうたんが敷き詰められた2000平米の広さを誇る「メインダイニング錦」はまるで宮殿のような趣。ここでは毎夜、ミュージシャンの生演奏を聴きながら夕食を楽しめる。

錦ヶ浦

ホテルニューアカオが位置するのは、熱海きっての景勝地「錦ヶ浦」の真上。熱海港の南東部にある魚見崎から約1キロ続く断崖のことを指し、太古の火山の噴出物でできた地質学的に貴重なスポットだという。敷地内からは波に侵食されたユニークな地形を間近に見ることができる。荒々しい岩壁に波が打ち付ける昼の様子も美しいが、夜にはライトアップされた神秘的な光景を楽しめる。