江戸の旅へ。
旧三国街道を歩く

上野(こうずけ)と越後を結ぶ交通路として古くから利用されていた旧三国街道。群馬県北部のみなかみ町には、江戸時代、街道沿いに整備された宿場や関所の跡が残されており、往時の面影に出合うことができる。昔の旅人のような気分で、上越国境の山並みが迫る旧街道を歩いてみた。写真はかつての宿場町・須川宿があった場所。現在は、宿場の歴史や土地の魅力を伝える「道の駅 たくみの里」となっている。

たくみの里から、隣の宿場「相俣宿」を目指して旧三国街道沿いに北上し、赤谷湖記念公園に着くと「相俣のさかさ桜」と呼ばれる桜の古木が現れる。伝説によると、天文21(1551)年の春、越後の上杉謙信が関東へ戦に向かう途中、相俣の日枝神社に参拝した。その際、春日山から持参した桜の鞭を逆さに挿して、芽吹くか否かで戦況を占ったという。不思議なことに桜は見事に芽吹いたと伝えられる。そんな伝承とともに、三国街道を見守り続けた桜である。

さらに旧三国街道をたどっていくと、三国峠の麓に一軒宿の「法師温泉 長寿館」がある。山間の渓谷沿いにたたずみ、140年以上の歴史を誇るという老舗旅館だ。混浴の大浴場「法師乃湯」では、湯船の底から自然湧出しているというフレッシュなお湯が楽しめる。昔の旅人も同じ道筋をたどったのだろうかと、想像を掻き立てられる三国街道歩きであった。