竹久夢二が愛した
榛名を歩く

榛名富士と榛名湖は、群馬を代表する風光明媚な観光地。湖畔から望む榛名富士はなだらかで優美な山容で知られる。明治時代以降、近接する伊香保温泉とともに、多くの芸術家や作家などから愛された。中でもこの地をこよなく愛したのが、明治・大正・昭和にかけて抒情画家・詩人として活躍した竹久夢二だ。夢二のロマンに思いを馳せつつ、春の山と湖畔を歩く。

夢二は、憂いのある表情を浮かべた華奢な女性を描く“美人画”で知られている。代表作の一つでもある昭和6年の作品『榛名山賦』には、榛名山を背景に春の女神である佐保姫が艶やかに舞う姿が描かれている。榛名の風光のとりことなった夢二は、この地にアトリエを建てて住みたいと願い、昭和5年、ついに念願のアトリエを榛名湖畔に完成させた。(竹久夢二伊香保記念館蔵)

榛名湖の西岸にある高台に、木造2階建ての質素な日本家屋がひっそりと佇んでいる。現存する写真や資料を基に、夢二が過ごしたアトリエ兼住居を復元したものだ。2階の窓からは、榛名湖と榛名富士の眺望が広がっている。晩年の夢二は、この地に「榛名山美術研究所」を設立し、ここを拠点に新たな芸術活動を行うことを夢見ていたが、実現することはなくこの世を去った。