庶民派ソムリエと行く、
海と山のワイナリー

日本海の海岸線から約1km、新潟市西部の海辺に5つのワイナリーが集まる「新潟ワインコースト」を、親しみやすいワイン解説に定評がある庶民派ソムリエ・小久保尊さんと訪ねた。中心となる「カーブドッチ・ワイナリー」の醸造家・掛川さんは土壌が砂地であることを生かし、スペイン北西部の大西洋沿いを主産地とする白ワイン品種「アルバリーニョ」の育成に力を入れている。

ワインを造る土地の気候風土をはじめ、ぶどうを取り巻く環境全てを表す言葉〝テロワール″。新潟産のアルバリーニョを使った「SABLE(サブル)」はフランス語で「砂」を意味し、エチケット(ラベル)には砂粒のモチーフが描かれている。「これって、まさにここのテロワールそのもののワインですね」と小久保さん。まさに、掛川さんが目指すイメージは「指の間からさらさら落ちる砂」のようなワインだという。

カーブドッチが手掛けるワイン経営塾1期生の本多さんが創設した「フェルミエ」へ。ぶどう畑の手入れはほとんどが手作業。化学農薬も病気が出たときなど対処的に使うにとどめ、醸造の過程ではぶどうやワインに極力ダメージを与えないよう細心の注意を払う。フェルミエのワインを知り尽くしたシェフの創作フレンチとのマリアージュは格別だ。

山形県庄内地方の「月山ワイン山ぶどう研究所」は、農協が酒造免許を取って設立したワイナリーだ。昔からこの地で採れていた山ぶどうの栽培技術を、試行錯誤の末に確立した。葉が大きくて厚く、ワイルドグレープと呼ばれている。醸造家・阿部さんの案内で廃道のトンネルを活用した樽貯蔵庫へ向かう。「土と水の匂いがする」と小久保さんが言うように、山ぶどう100%の「ソレイユ・ルバン ヴィティス コワニティバレル」は「深~い山の味」だった。