トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2019年7月 青森/北海道

2019年 7月号 特集
鳥の目で描かれた
青森・函館

大正から昭和にかけて活躍した鳥瞰図絵師、吉田初三郎。鳥のような視点で日本各地をパノラマ絵図に描き、一世を風靡した。絶景に惚れ込み、住まいと工房を構えた、八戸の種差海岸へ旅をした。また、現代の鳥瞰図絵師と函館の街を散策し、鳥瞰図の描き方や函館の魅力を紹介。十和田湖周辺と北海道・大沼周辺を、ダイナミックに描かれた鳥瞰図を見ながら地理学者と散策する。(個人蔵)

鳥瞰図制作現場を
函館で体験

鳥瞰図

現代の鳥瞰図絵師・青山大介さんは、現在、函館の鳥瞰図を制作している。街の至る所を撮影した写真をエリアごとに分け、鳥瞰図を描く際の参考資料にする。インターネットのマップと白地図で描く場所の位置を入念に確認。縮尺に応じて、高さと長さを決めて立体化する。写真を参考に、屋根の形や窓の数まで、すべてフリーハンドで描く。

青山大介さん

青山さんと函館の市街地へ。八幡坂周辺には、函館らしいレトロな建物が点在している。街をくまなく歩き回り、何枚もシャッターを切る青山さん。シンボルになりそうな建造物や銅像だけでなく、細かな路地まで全ての道を記録し、資料にする。記念館となっている青函連絡船「摩周丸」には敬意を表し、線路から貨車を引き込む現役時代の姿を再現したという。

外国人墓地から眺める函館湾

外国人墓地は、函館で青山さんがお気に入りの場所。ここから眺める、時がとまったような穏やかな函館湾に心引かれるそうだ。夕暮れ前に訪れると、傾き始めた陽を受けて函館湾が輝いていた。雄大な海を臨む場所と、賑やかな市街地と、断崖絶壁のような厳しい自然環境が、一つのエリアにまとまっているのが函館の魅力だと、青山さんは語る。