八戸を愛した吉田初三郎

大正から昭和中期を中心に活躍した鳥瞰図絵師、吉田初三郎。全国に鉄道が敷かれ、観光旅行がブームになった時代、初三郎の鳥瞰図は鉄道会社や地方自治体のガイドブックなどに広く使用され、重宝された。大幅な省略と強調、デフォルメ、自在に視点が変わるワイドな画法による独自のスタイルで描かれており、「初三郎式鳥瞰図」と称されている。(八戸クリニック 街かどミュージアム蔵)

海岸の傍らに天然芝生地が広がる八戸市の種差海岸。周囲は荒々しい岩礁や白砂の浜、松林が続く、東北を代表する景勝地だ。初三郎は、変化に富んだこの絶景を望む高台に巨大な別荘兼アトリエを建て、「潮観荘」と名付けた。多くの弟子と共に、東北や北海道の鳥瞰図を描く拠点として使われたが、昭和28年に焼失。跡地からの風景は、今も変わることはない。

八戸の市街地にある街かどミュージアムは、1000点以上の初三郎作品を所蔵する私設美術館。館内には初三郎の功績を伝えるパネル展示や関連書籍のライブラリーも。時代をまたぎ、初三郎は八戸を何度も描いた。それらを見比べてみると、描かれた時代の様子や描く目的が見えてきて、面白い。(八戸クリニック 街かどミュージアム蔵)