トランヴェール Train Vert
トランヴェール 2019年5月東京

2019年 5月号 特集
時を駆ける、東京時間旅行

2019年5月に改元が行われ、時代は「平成」から「令和」へと代わった。新しい時代が始まったそのとき、明治、大正、昭和、平成を振り返り、そして次の令和を覗き見る“時間旅行”へと出発。世相を色濃く反映しながら変貌を遂げてきた都市・東京を舞台に、時代ごとに異なる文化を感じる旅に出た。

今も昔も憩いの場。
“昭和”の喫茶店

渋谷「ライオン」

第2次世界大戦の傷跡から復興し、高度経済成長期へと向かっていった昭和30~40年代の日本。さまざまなスタイルの“喫茶店”が人々の憩いの場として流行した時代だった。店内でレコードをかけ、コーヒーとともにクラシック音楽を楽しませた「名曲喫茶」もその一つ。昭和元年に創業した東京・渋谷の「ライオン」はその草分け的存在だ。吹き抜けに設置された巨大なスピーカーの前にずらりと並ぶ椅子。厳かな礼拝堂を思わせる喫茶店だ。

新宿の老舗「うたごえ喫茶ともしび」

リクエストした歌を、ピアノやアコーディオンなどに合わせて全員で合唱する「歌声喫茶」は、昭和30年代、若者を中心に国民的なブームとなった。カラオケの登場で昭和後期には多くの店が姿を消したが、近年人気が再燃。その牽引役は、東京・新宿の老舗「うたごえ喫茶ともしび」だ。かつてのブームを知る人々が再び足を運んでいるほか、昭和歌謡好きの若い人々も訪れるという。昭和生まれの音楽文化の発信基地として、新たな輪を広げている。

※ともしびは2020年夏以降の1年以内に移転を予定しています。詳細はホームページでご確認ください。

新宿「DUG(ダグ)」

戦後、マイルス・デイヴィスやジョン・コルトレーンら名プレーヤーが続々と現れ、世界的なジャズブームが起きた。昭和30年代、日本でも空前のブームが到来した。コーヒーを飲みながらジャズのレコードに耳を傾ける「ジャズ喫茶」が新宿の街に誕生したのはこのころだった。新宿に深く根を下ろす「DUG(ダグ)」は往時の面影が残る名店。良い音響と居心地の良い空間にこだわり、今も昔もジャズファンのたまり場である。