東京感動線

「ちょっとだけ未来の景色」を見つめ、
東京の魅力を再発見するフリーマガジン
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東京感動線 Magazine

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「東京の、ちょっとだけ未来の景色。」を紹介するフリーマガジン『東京感動線Magazine』。日本文化を発信する雑誌『Discover Japan』とコラボレーションし、山手線沿線にまつわる人・モノ・コト・場所を深掘り取材して誌面づくりを行っています。制作するうえで大切にしていることや、誌面を通して伝えたい想いについて、『東京感動線 Magazine』の編集長を務める株式会社ディスカバー・ジャパンの吉田健一さん、ディレクターを務める同社の吉住悠佑さん、山手線プロジェクトの岳中美也、斎藤京子が語りました。

【最初の画像】
左から吉住悠佑さん、吉田健一さん、斎藤京子、岳中美也。

長く受け継がれてきたものにも、未来へのヒントがある

──『東京感動線Magazine』のコンセプトを教えてください。

斎藤:東京感動線と同じく「東京の、ちょっとだけ未来の景色。」がコンセプトです。これをもとに毎号異なるテーマを立て、街や人、場所をDiscover Japanさんとともに取材しています。駅構内のラックのほか、カフェやレストラン、ホテルといったスペースなどで配布。Webサイトとも連動させています。

──これまでには、どんな特集をされたのでしょうか。

吉田:全7冊のなかで、巣鴨・大塚・駒込など山手線の北エリアの特集をしたり、食やナイト・タイム・エコノミ―といったテーマを設けました。そのなかで一貫して大切にしているのは、先駆的な人や最先端なスポットに限らず、街に受け継がれてきた歴史や文化もしっかりと取り上げること。一見すると“ちょっとだけ未来の景色”とはとらえにくいですが、“ちょっとだけ先の未来”から見た過去は“今”じゃないですか。だから、ずっと昔から今まで続いているものには、未来を見据えるための視点があるはずだし、“ちょっとだけ先の未来”の人が魅せられる理由が秘められていると思うんです。だから、必ずしも未来的で先端な人・モノ・コト・場所だけじゃなく、意識的に歴史や文化にもフォーカスするようにしています。

──制作はどのように進めているんですか?

岳中:全体の大きなテーマは私たちから提案させていただいて、そこからお互いにネタを出し合います。そこで決まったネタをもとにして、今度はDiscover Japanさんに具体的なページ構成などを提案してもらい、その後取材や撮影、執筆をして誌面づくりを行っています。

──企画の立て方で大事にしている視点はありますか?

吉住:Web上のコンテンツやSNSとは違い、限定的に配布されている紙の冊子は読者の方が能動的にコンテンツに触れるものと考えているので、必ず読者のみなさんを満足させたいと思っていますし、ずっと紙媒体に携わってきた僕たちとしても、全社的に力を入れて企画提案をしています。「『東京感動線 Magazine』は、『東京感動線』のフラッグシップコンテンツだ」くらいに、勝手に思ってます(笑)。

背景や物語までしっかりと届けたい

──誌面づくりでこだわっている部分は?

吉田:“ちょっとだけ未来の景色”を突き詰めていくと、お店や施設であってもその中心には必ず人がいます。さらにいうと、そこで人と場所、人と人がつながっていきます。だから“人”も大切な軸のひとつだと思っていて。それを表現するために、たとえば食を特集したvol.05の表紙は、お弁当単体ではなく手を添えた写真で構成したりと、どこか人の気配を感じられるようにしています。

吉住:その背景には、初期のころに東京感動線のブランドのあり方を議論する会に参加させていただいたことが関係しているんです。そこで受け取った「場所と場所をつなぐ線ではなく、沿線のまちを含む面であり、東京の多様な個性との出会い・交流が豊かな『場』である」「山手線を利用する方も参加できるような、双方向の関係性であるべき」という言葉が印象的でした。だから『東京感動線 Magazine』の誌面でも、単なるスポット紹介にとどまらず、そこに関わる人の物語までお伝えする。そんなふうにして、しっかりと人にも焦点を当てたいと考えているんです。

──特に印象に残っている特集はありますか?

吉田:う〜ん、どれも印象的なんですが(笑)、ひとつ挙げるとしたらvol.00の「新旧が同居する巣鴨・大塚・駒込」でしょうか。巣鴨と大塚にあるRYOZAN PARKを紹介して、そこにまつわる人にもきちんと焦点を当てられましたし、東洋学の専門図書館の東洋文庫や魚屋さんも取材することができました。今まさに先駆的な人や場所、昔から先鋭だった人や場所、このどちらも紹介できたと思っています。

斎藤:私も同じですね。大塚駅に勤務していたこともあるので、特にvol.00は印象的でした。当時は東京感動線プロジェクトのメンバーに加わる前だったので、いち読者として読んで。大塚には2年半通っていたのに知らないことだらけで驚きましたし、新しい発見に満ちていて読むだけでワクワクしたのを覚えています。こんな生き方もあるんだ、人にはこんなにも奥深い物語があるんだということを知ってからは、毎日がすこし、刺激的で豊かになったように思います。

岳中:たしかに、初回にふさわしい特集でしたよね。私はvol.03の「ナイトタイム エコノミー」の号も好きです。黒い表紙も新鮮で、駅のラックの中でもひときわ目を引く存在になっていたと思います。それに『東京感動線 Magazine』は通勤の最寄りで手に取っていただきたいとも思っているので、大人の夜の楽しみ方を再定義するという切り口がぴったりでした。こういうチャレンジングなことができたという意味でも、思い出深い号です。

【画像1】
RYOZAN PARKを紹介したvol.00「新旧が同居する巣鴨・大塚・駒込」。

多様性に富んだ山手線沿線から東京を再発見

──WebやSNSが盛んな今、紙媒体を発行する意義は?

岳中:東京感動線では、人と人をつなぎたいという思いのもと、これまでにも交流拠点となる施設をつくってきました。駅や施設などで、紙媒体を掲出することはものすごく重要だと思っています。駅を利用している方が偶然手に取り、東京感動線のコンセプトに共鳴してくださるかもしれないので。

斎藤:やっぱり紙媒体には、ページをめくると世界観がガラッと変わったりするような、Webの縦スクロールにはないおもしろさがあると思うんですよね。だから今の時代にあえて紙媒体で発信することにも、大きな意味があると信じています。

──『Discover Japan』が制作することの強みはどんなところだと考えますか?

吉田:『Discover Japan』のコンセプトは“ニッポンの魅力、再発見”。日本各地の文化を掘り起こして、その土地の魅力を再発見することを常に行っています。おもな取材対象は人。その方がどんな想いを抱いて活動しているのかをひも解いています。そのスタンスは東京を舞台にした『東京感動線 Magazine』でも同じ。『Discover Japan』で積み上げてきた、人の物語を掘り下げるノウハウを生かして制作することで、東京が持つ一面を再発見したいと考えています。

斎藤:私たちは鉄道会社なので、どうしても鉄道ベースでものごとを見てしまいがちです。でも実は、東京のいたるところで新たな世界が広がっているんですよね。『東京感動線 Magazine』の制作に携わることが、あらためて東京の街や人を見つめる機会にもなっています。

──今後、『東京感動線 Magazine』で発信したいことを教えてください。

吉田:山手線沿線という、東京のなかでも多様性に富んだ場所では、「SDGs」「Well-being」といった世界的なキーワードに関わるような領域で活躍されている方も多くいます。そういった方々を取材・発信することで、読者の方が“東京の、ちょっとだけ未来の景色。”を考えるきっかけになるような媒体を目指したいです。

斎藤:私自身、東京出身で長く東京に暮らしていますが、東京は“なんでもあるようで、なにもない”と思っていました。だけど、『東京感動線 Magazine』に出会い、そのイメージが覆されたんです。ページをめくるたびに、新しい東京にたくさん出会えた。だからこそ、山手線沿線にお住まいの方はもちろん、東京で暮らしている方や働いている方など、ぜひたくさんの人に読んでいただきたいです。

【画像2】
vol.03「ナイトタイム エコノミー」。


『東京感動線 Magazine』特設ページ