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「HAND!in Yamanote Line‐山手線でアートと音楽を楽しむ15日間‐」は、山手線の30駅やその周辺施設、オンラインを舞台に繰り広げられるアートと音楽の祭典です。山手線の全駅を巻き込むという前例のない取り組みは、どのようにして進められていったのでしょうか? 企画・運営を担当するプロジェクトチームのメンバーが、企画に込めた想いや見どころを語りました。
──「HAND!in Yamanote Line‐山手線でアートと音楽を楽しむ15日間‐」の概要を教えてください。
齊藤 山手線の30駅やその周辺施設、オンラインを舞台に、アートと音楽を楽しめる祭典です。音楽ライブやライブペインティング、参加型インスタレーション、ARアプリでのアート体験など、バラエティに富んだラインナップにしました。
タイトルにある「HAND!」は「Have A Nice Day!」の略。11月16日から30日までの15日間、山手線で一緒に楽しみましょうという気持ちを込めて、この名前にしました。山手線の「手」ともリンクさせています。
服部 最初は「TOKYO ART & MUSIC ROUND」という仮称で進めていたんですが、もう少し“日常の中に豊かな瞬間がある”感じを出したくて。みんなで意見を出し合い、満場一致で「HAND!」に決まりましたね。
齊藤 コロナ禍で、友だちと出かけたり、誰かと喋ったりっていうことが気軽にできなくなってしまっている状況がずっと続いています。だからこそ、“手と手を取り合う”ではありませんが、人の温かみが感じられるイベントにしたいと思ったんです。心が軽くなったり、温かな気持ちになってもらえるようなアートや音楽の企画を、このタイミングだからこそやりたいねって。そういう意味も込めて、温かみが感じられる名前をつけました。
──企画が立ち上がったのは、どういう経緯からなのでしょうか?
服部 これまでは、個別の駅のカラーを引き出したり、つながりを作るような取り組みを行っていましたが、今年度のメインプロジェクトとして山手線一周、30駅を巻き込んだイベントをやってみようと。企画を立て始めたのは6月ごろで、美術館が閉まったり、コンサートが軒並み中止になったりしていた時期でした。それで、“そういう場所に行けないんだったら、アートや音楽のほうからこっちに出てきてもらえばいい”と考えたんです。
社会全体に先行きが見えない空気が蔓延しているなかで、確かなものが感じられるというのがすごく大事だと思っていて。その確かなもの、つまりアートや音楽が駅という場所にあることで、日常のなかで実感してもらえたらといいなと考えています。
──駅でアートや音楽を楽しめるのは新鮮な体験ですね。
服部 東京感動線では、“ちょっとだけ未来の景色”をつくることを目指しています。そのコンセプトを踏まえて、音楽コンサートやライブペインティング、そういうものを駅でつくっていこうというイメージは、僕らのなかでもともと共通して持っていました。なので、今回のイベントにも、美術館のように作品を並べて展示するというよりは、ライブ感のあるものが多いんです。
──個々のイベント内容も、登場するアーティストもバラエティに富んでいます。そのなかで、一貫して大事にした視点はなんですか?
齊藤 実施する場所が駅ということもあり、あらかじめ情報を見て来る人もいれば、たまたま見つけて立ち寄る人もいらっしゃると思います。そういう方でも、美術館とは少し違う、すっと入り込めてすっと楽しめるようなコンテンツにしたいと思っていました。参加するアーティストさんとも「ここから元気になってほしいよね」とか、そういう気持ちを共通認識として持ちながら、どんなことができるのかを一緒に考えていきましたね。
服部 アーティストさんの人選でも、いわゆるオーセンティックなアートではなく、日常のなかにアートがあふれているっていう未来がいいよねという考え方に共感してもらえる方にお願いしました。
──どこかに出かける道すがらにふらっと入っても十分楽しめる、むしろ予備知識なしのほうが楽しめそうですね。
齊藤 そうですね。駅でこういうことが行われると、いい意味でちょっと違和感もあって、それが魅力のひとつになるのではないでしょうか。個別の駅ではなく、山手線全体でひとつのイベントとしてお届けすることで、もっと多くの人に駅という環境のなかで触れられるアートや音楽の楽しさに気づいてもらえるきっかけになるといいなと思います。
──数あるイベントのなかで、おすすめはありますか?
川井 私は11月28日に西日暮里駅で行われる、ワークショップで花かざぐるまをつくって飾るイベントでしょうか。会場の「エキラボniri」は2019年の秋にオープンしたものの、今年の春にやろうとしていたイベントもなくなってしまっていたので、いい再スタートにまたなればいいなって。個人的にも楽しみにしています。
──ポスターパネルジャックは「HAND!in Yamanote Line」を象徴するような企画ですね。
齊藤 アーティストのOVER ALLsが、30駅のポスターパネルにそれぞれ違う絵を描くというものです。前例のない企画なので、最初は駅にそんな話を持ちかけて大丈夫かなっていう不安はありました。30駅すべてに説明に行くのもスケジュール的にものすごくタイトだけど大丈夫?みたいな感じだったんですけど(笑)、実際に説明に伺ったら意外とすごく喜んでいただけて。予想よりもずっと、すんなりと実現できました。
──初めての試みがたくさんあったんですね。
古田 そうですね。駅にアートを呼び込んでいくようなこと自体も初めてですし、企画内容によって駅へのアプローチの仕方も変わります。それを一つひとつ調整していくという点でも、初めての挑戦でした。
──たくさんの人の協力を得るなかで、新たな気づきはありましたか?
服部 各所との交渉や調整を進めていて、あらためて山手線の存在の大きさみたいなものを感じました。アーティストのなかには「山手線の駅でやれるなら」と参加してくれる方がすごく多くて。作品を展示したいっていうのももちろんあると思うんですけど、山手線がおもしろくなると東京が良くなるんじゃないかと、みんながなんとなく思ってくれているんだなと感じたんですよね。
齊藤 たぶんアーティストの方も、こういう状況だからこそ、自分たちになにができるのかっていうことを、すごく考えていたんだと思うんです。そういうなかでの企画の提案だったので、前のめりに「おもしろいことやりましょう!」とおっしゃっていただきました。
駅が賛同してくださるのもすごくうれしかったです。最初は自分たちで企画したイベントがいくつかあったのですが、駅や、駅にある商業施設を運営するグループ会社にお声がけをしていくなかで先方も提案してくださって、企画が広がっていきました。イベントもどんどん増えていき、これどうやって収束するの?と一時は不安になるくらい(笑)。でも結果として、これだけたくさんのイベントを実施できることになり、うれしいです。
服部 ずっとバタバタでしたね(笑)。でも本当に、ここまで走り続けられたのは、次につながってほしいなという思いもあって。世の中では、世間体を鑑みてなんとなく中止にしたイベントもたくさんあると思うんですけど、でもJR東日本が大規模な祭典をやることで、そういう曖昧な空気に風穴を開けられたらと思っているんです。もちろん危険なことをやってほしいわけではないのですが、みんなが足踏みしているなかで、一歩前に出るっていうムーブメントにしていきたいなと。
齊藤 閉塞感のなかで心が落ち着かない状況がずっと続いていたので、企画する側であると同時に、いち市民として、なにかおもしろいことがしたい、なにかに参加したいという気持ちがありました。だからこそ、普段利用している駅で気軽に非日常体験ができるというのは、すごくいい機会なんじゃないかなと思っています。感染対策はきちんととったうえで、みんなが少しでも前向きになれるようなイベントになればうれしいです。
■開催概要
「HAND!in Yamanote Line‐山手線でアートと音楽を楽しむ15日間‐」
・開催期間:2020年11月16日(月)〜30日(月)
・開催場所:山手線全30駅、各駅の商業施設・店舗、オンライン
■「#東京感動線HAND」で投稿! SNSキャンペーン
期間中、各イベントでの写真を「#東京感動線HAND」をつけてTwitterまたはInstagramに投稿すると、東京ステーションホテルのペア宿泊券や、東京感動線がセレクトするアートグッズ等の賞品が合計20名様に当たります。ぜひご参加ください。
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東日本旅客鉄道株式会社
東京支社 事業部 企画・地域共創課 山手線プロジェクト
服部 暁文/古田 恵美/川井 恵里子/齊藤 千明