「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.682024/12/2
宮坂 明宏の想い
諏訪の人たちの「こころの唄」を伝えたい。
7年に一度執り行われる、諏訪大社「御柱祭」(式年造営御柱大祭)では、樅の巨木を山から切り出し、それを大勢の氏子の力で山から里へと曳き、上社(前宮、本宮)、下社(春宮、秋宮)の各社殿の四隅に建てる。この天下の大祭で、甲高く澄んだ声で曳行の安全を願い、声の力で氏子たちのこころを一つにまとめるのが、木遣り衆だ。
下諏訪町木遣保存会会長の宮坂明宏は、下諏訪の地で生まれ育ち、この独特の節まわしに長年親しんできた。木遣りは「御柱祭」の華であり、諏訪の人たちの「こころ」だといわれる。
諏訪の人たちのこころの唄を伝承し、未来へとつないでいくこと。日々、仲間たちと一緒にその取り組みを続けている。

木遣りこそ、御柱の華である

諏訪では、木遣りを唄うことを、“鳴く”と表現し、いい声で鳴けるように、日頃から発声、節回しの稽古に励みます。諏訪大社の氏子地域は、下諏訪のほか、上諏訪、岡谷、茅野、原村、富士見など、約20万人にもなります。諏訪の人たちは、「山の神様、お願いだ~」「力を合わせてお願いだ~」という曳行の唄を子どもの頃から聞いているので、その節回しは皆のこころに焼きついているんです。
御柱祭が行われるのは、7年に一度の寅の年、そして申の年の春。4月に山出し、5月のゴールデンウィークの頃には里曳きが行われます。毎回全国から200万人近くの方々が訪れる、まさに大祭です。次回は令和10(2028)年になります。
毎週の稽古で、よく透る澄んだ声づくりを

稽古は、毎週日曜の夜に春宮の境内で行っています。「曳行の木遣り」「神事の木遣り」など、先輩の指導のもとに稽古します。近年は先達の名人たちの録音を繰り返し聞くという練習法も取り入れています。「神事の木遣り」などは、難しくて大人でもベテランしか鳴けなかったものですが、小学生に「真似でいいからこの通りに鳴いてごらん」と指導すると、案外、子どもたちのほうがすぐにできるようになるんです。
祭のときに御柱に付けて曳く縄は400メートルもあるので、遠くからでもちゃんと曳き手全員に伝わるように、高くて張りのある声、よく透る声で鳴くことが求められます。祭の最中は、続けて唄う必要もあるので、大変です。まずは日々の稽古で声づくりに努めます。
木遣りの実演で、
御柱祭の雰囲気を味わっていただきたい

揃いの法被を着て、御幣をかざして、「山の神さま、お願いだ~」という節回しのあと、「よいさ、よいさ」という掛け声でお客さまの旅の安全を願います。掛け声に合わせて両手を挙げる所作は、お客さまにも一緒にやっていただくようにお願いしています。そんなことで諏訪の祭りの気分を少しでも味わっていただけるのではないかと思っています。
ホームでは地元の皆さんも小旗を振って「お見送り」に参加されていますが、毎回たくさんの人たちが集まります。町をあげて「TRAIN SUITE 四季島」を歓迎していることを実感します。
お客さまには、できればこれを機会に再び下諏訪へ、そして御柱祭にもおいでいただき、ぜひ私たち木遣り衆の勇姿をご覧いただければと思います。
諏訪の人たちは、
「次の御柱祭までは元気でいたい」と言います

諏訪の人たちは、御柱祭を中心にして日々の暮らしを送っているといってよいと思います。年配者たちは年齢を重ねるごとに、「次の御柱祭まで元気でいたい」と口にするようになります。
下諏訪という町は、諏訪湖を中心に山々に囲まれた、自然豊かな町。また五街道の中山道と甲州街道が合流する宿場町でもあり、本陣や商家などの往時の面影を伝える建物もあります。最高の温泉もあります。春夏秋冬それぞれの季節に、風光明媚なこの土地をぜひゆっくりと楽しんでいただければと願っています。