「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.672024/8/21

新潟 古町芸妓ふるまちげいぎ
和香、志穂、ふみ嘉の想い

湊町・新潟の粋と雅を、旅の思い出に。

「TRAIN SUITE 四季島」の1泊2日長野コースでは、初日の午後、新潟を訪ね湊町・新潟のおもてなしの華、古町芸妓ふるまちげいぎの唄と踊りを鑑賞する。
信濃川と阿賀野川の河口に位置し、古くより水運で栄えた新潟の町は、いくつもの堀割が張り巡らされ、枝垂れ柳が美しい柳都りゅうとと呼ばれる、雅な土地柄。そして、この地を訪れるさまざま人びとを受け入れ、町を盛り立ててきたのは粋な古町の芸妓衆だった。
湊町・新潟の伝統を受け継ぐ古町芸妓は、修練を重ねた見事な唄と踊りで、忘れられない旅の華やかなワン・シーンを演出してくれる。


水運の町・新潟の繁栄とともに発展した古町花街

和香:
新潟は古くから数多くの船が出入りし、さまざまな人や物資が行き交う土地でした。江戸時代には北前船の往来も盛んになり、町もたいそう栄えました。そうした湊町・新潟を訪れる人たちをおもてなしする場所として、古町花街ふるまちかがいは発展してきました。かつて古町には400人もの芸妓がいて、古町を歩くと人とすれ違うときに肩がぶつかるほど、大変な賑わいだったそうです。今でも古町は、飲食店、居酒屋などの集まる繁華街で、料亭も10軒ほどあり、そこが私たち古町芸妓の主なお出先になっています。
古町芸妓がお座敷で披露するのは市山流の踊りです。江戸時代に上方歌舞伎の振付をされていた市山七十郎が流祖で、現在のお師匠さんは七代目。歌舞伎の要素もあり、舞台全体を使って表現するようなこともあります。お師匠さんからは、「小手先だけではなく、腹から出る踊りをしなさい」と教わります。
唄は「新潟おけさ」「米山甚句」「相川音頭」など地元の民謡が多く、なかでもお座敷の最後によく演じるのは「新潟小唄」です。これは戦前、三代目の萬代橋ができたときに作られた、北原白秋作詞の42番まであるという大作で、萬代橋はじめ、県内各地の土地柄名物を歌詞にしています。普段のお座敷では、このなかから2番ほどご披露しています。


踊り、お茶、着物など、和の文化に導かれて芸の道へ

ふみ嘉:
私が古町芸妓になったのは、子どもの頃から親しんでいた神楽がきっかけでした。新潟は全国でも神社が多い土地で、各地に神楽の伝統があります。地元ならではの唄や踊りの文化を仕事にできたらという想いでこの道に入りました。
志穂:
私は小学生の頃に茶道を習っていたことで、日本の文化に興味を持つようになりました。最初はお菓子を食べられるのが何よりも楽しみでした (笑)。その後、着物の仕立てを習うために専門学校に入り、卒業後も、和のものに触れていたくて、今に至ります。
和香:
私は、祖母が着物や浴衣を縫うのが好きで、それを着せてもらったのが、幼い頃の楽しい思い出です。地元は市近郊の亀田なのですが、夏の「かめだ祭り」に出るので、笛や太鼓を習いました。その時、先生に褒めていただいて嬉しかったことを覚えています。このお仕事は、踊り、三味線、お唄も習えて、綺麗な着物も着られるというのに、惹かれました。


新潟ならではの演目と、お座敷遊びでおもてなし


和香:
私たち古町芸妓の日頃のお稽古は、市山流の踊りと長唄、鳴り物など、いろいろあります。毎年9月、市内の「りゅーとぴあホール」で「ふるまち新潟をどり」という古町芸妓総出演の公演がありますが、ここが日頃の修練をご覧いただく発表の場になります。
「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまがお見えになる際には、最初に古町芸妓についてのご説明を申し上げ、「四季の新潟」「新潟おけさ」「新潟小唄」の3曲の踊りをご披露したあとに、古町ならではのお座敷遊びをご紹介しています。たとえば「樽拳」という、樽を叩きながら、お客さまとジャンケンを繰り返すという、新潟の花柳界に古くから伝わる遊びがあるのですが、とても面白がってくださいます。
志穂:
「新潟にもこんな花柳界があるんだね」と驚かれるお客さまも多く、特に女性のお客さまは着物や髪型、お化粧に興味を持たれて、いろいろとご質問もいただきます。海外のお客さまは、「Beautiful!!」と興奮しておっしゃってくださることもあります。


古町芸妓は、観光大使の役割も

ふみ嘉:
古町芸妓は、夏の「新潟まつり」で踊りを披露したり、新潟の観光振興ポスターのモデルになったり、観光大使的な役割も担っております。新潟には名物がたくさんあり、お酒はもちろん、お米、お寿司、タレかつ丼、ご当地ラーメンなど、召し上がっていただきたい食材、お料理が山ほどあります。
志穂:
海のものではノドグロ、南蛮エビでしょうか。夏は枝豆や鯨汁。冬場ですと塩引鮭を自然の風で1年かけて熟成した「鮭の酒びたし」もぜひ味わっていただきたいです。お酒が好きな方でしたら、さまざまな新潟のお酒をテイスティングできる、JR新潟駅構内の「ぽん酒館」もおすすめです。
和香:
名所といえば、越後一之宮・彌彦神社、温泉なら新潟の奥座敷・月岡温泉でしょうか。最近は、十日町の清津峡渓谷が、トンネル内から峡谷の景色を撮影できて写真映えするので人気ですね。
ふみ嘉:
新潟の魅力は語り切れません。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまには、この旅をきっかけにまた新潟に遊びにいらしていただけると嬉しいです。
志穂:
お客さまには、古町のおもてなし、芸などで、新潟という土地の伝統や情緒を感じていただきたい。この古町で、みなさまをお待ちしております。
和香:
わたしたち古町芸妓は、この土地の唄と踊りが大好きで日々精進しております。お荷物にならない旅の「おみやげ」として、良き旅の思い出のひとつにしていただければ幸いです。
新潟 古町芸妓 和香、志穂、ふみ嘉 [ 文=鈴木伸子 撮影=小山一成 ]