「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.652024/2/9

JR盛岡鉄道サービス 新幹線青森営業所
佐川 里恵、氣仙 登久子の想い

清掃のプロとして。青森で整える、清潔で快適な客室

「TRAIN SUITE 四季島」冬の2泊3日コース、2日目の朝、列車は青森駅に到着する。
その後、お客さまが観光にいらしている間に車内の清掃を行っているのが「JR盛岡鉄道サービス」の女性スタッフたちだ。
冬のコースの運行時期である12月から3月の青森は、もっとも寒さと雪が厳しくなる季節。そのような中、「清掃のプロ」として彼女たちは、お客さまの快適な旅のお手伝いをしたいという想いを込めて、持ち前のチームワークで清掃作業に努めている。


心地よく過ごしていただくため、ホテルの室内を清掃するように

佐川:
JR盛岡鉄道サービスはJR東日本のグループ会社の一員として、岩手・青森県内のJRの鉄道車両などの清掃や整備を行っています。私たちが所属する新幹線青森営業所は、2010年の東北新幹線八戸~新青森駅間開業を機に、新幹線の車両や駅舎の清掃を行う部門として発足しました。私も氣仙もそのときの同期入社組で、今年で13年目になります。
氣仙:
通常は、新幹線や在来線の車内などの清掃を行っているのですが、冬の2泊3日コースで「TRAIN SUITE 四季島」が青森駅に到着することになり、ほぼ週に一度、車内の清掃を担当するようになりました。
お客さまが弘前や西目屋、五所川原などに観光にいらしている間に清掃を完了し、その後列車は弘前駅に移動。夕方再びお客さまが乗車されるという行程になっています。
佐川:
青森駅では外板(車体外側)担当のスタッフが、車体の洗浄や給水の作業も行っています。「TRAIN SUITE 四季島」には、調理やシャワー、お風呂、トイレなどのための水が大量に必要で、2泊3日の旅だと途中での給水が不可欠となります。
現在、車内の清掃は、私と氣仙、長利文代、鈴木那津美、蝦名実知子、浅田夏希、小鹿紀子の7名のチームで行っています。グラスや花器などの工芸品、この列車のために特別に制作された調度品なども設えてあるため、特に気を使って作業しています。
車内では清掃と同時進行でトレインクルーが各部屋でベッドメイキングを行っていますので、その作業の邪魔にならないように、水回りの清掃、ごみの回収、備品やアメニティの補充などを行っていきます。


その日の仕事を全員で振り返り、より充実した清掃を目指す

氣仙:
「TRAIN SUITE 四季島」車内の清掃は、やはり特別です。ラグジュアリーホテルの室内を清掃するような内容で、アメニティの補充や、浴室の拭き上げなど、特別なマニュアルに従って作業を進めます。車内にはすべての客室にお花が活けてありますが、その水替えも私たちが担当しています。通常の列車の清掃にはない作業がいくつもあり、はじめは戸惑うこともありました。
佐川:
作業終了後に営業所に戻ってからは、全員で作業内容を振り返り、改善について話し合い、次回の作業につなげるようにしています。 特に、アメニティグッズの補充は、話し合いを重ねて効率の良い方法を模索しました。はじめのうちは、アメニティボックスの歯ブラシ、ヘアブラシ、カミソリなどの複数の備品を補充するために何度も備品庫を往復し、時間がかかっていました。そこで、それらの配置や不足数が一目でわかるよう、ポケットに入る一覧表とチェック表を作成しました。おかげで不足備品がすぐに把握できるようになり、備品庫まで何度も取りに行く手間や時間を削減することができました。
氣仙:
トレインクルーの方々との連携も重要です。全員が効率よく作業ができるように、ほかのスタッフやトレインクルーの方の動きを見ながら、臨機応変に動くようにしています。


寒いから、美しい。冬ならではの青森の魅力を知っていただきたい

氣仙:
12月から3月の間、青森は一年でもっとも寒い時期となりますが、清掃作業をしていると汗ばむほどです。みんな半袖の制服で働いています。
ただ外に出ると、気温はマイナス5〜6℃。寒い日にはマイナス11℃になることもあります。雪も降りますし、青森駅は海が近いため風も強いです。

佐川:
豪雪や吹雪のために在来線のダイヤが乱れることもあり、時には「TRAIN SUITE 四季島」の青森駅への到着が遅れることもあります。そのぶん車内清掃の時間も短くなりますが、そんなときはトレインクルーとの打ち合わせをしっかりと行い、短時間でも清掃のクオリティを落とさないように、チームワークでとにかく頑張ります。

氣仙:
冬の厳しさは確かにありますが、その分、雪国ならではの美しさや楽しみがたくさんあります。
青森は春夏秋冬、季節がはっきりとしているのが特徴です。とりわけ、春は弘前公園の桜、夏はねぶた、秋は奥入瀬渓流の紅葉、そして、冬は白銀の雪景色。新雪が風に煽られて激しく吹く「地吹雪」を、あえて体験していただく観光ツアーもあるんです(笑)。

佐川:
それに青森にはおいしい日本酒がたくさんありますし、冬はタラのあら(じゃっぱ)と野菜を煮込んだ「じゃっぱ汁」をはじめ、郷土料理の名物もいろいろ。帆立などの海の幸もおすすめです。
「TRAIN SUITE 四季島」の旅で、お客さまが今までご存じなかった冬の青森の魅力に出会っていただければ、こんなに嬉しいことはありません。
清掃のプロとして、お客さまが旅の多くの時間を過ごされる車内を、私たちの手で清潔で美しく整えることで、快適な旅のお手伝いができればと願っています。
JR盛岡鉄道サービス 新幹線青森営業所 佐川 里恵、氣仙 登久子 [ 文=鈴木伸子 撮影=小山一成 ]