「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.522020/11/30
美しい津軽笛の音色を旅の思い出に
お客さまの旅の思い出をイメージしながら演奏
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私は2017年に「TRAIN SUITE 四季島」が運行を開始した当初から弘前駅のホームでお客さまをお出迎え、そしてお見送りをするときに津軽笛の演奏をしております。お客さまのお顔を見ながら白神の森の天候や、その日1日をどのようにお過ごしいただいたのかなどを想像して、その場で演奏する曲を決めます。
「お山参詣登山囃子」は津軽笛の代表曲で、私が小学校3年生のときから吹いている曲です。津軽の人びとに親しまれてきた岩木山に豊作の感謝と祈願をする曲で、「TRAIN SUITE 四季島」の旅の安全祈願も兼ねて、必ず演奏します。演奏するのは伝統的な曲だけではありません。ほとんどのお客さまは津軽笛の音色を初めて耳にされると思いますから、親しみを持っていただこうとカバー曲、時にはアニメの主題歌も演奏しています。また四季折々の津軽地方の風情を感じていただくために、秋はオリジナル曲「フレアカムイ」、夏は「シーラカムイ ブナの祈り」というように季節に合わせた曲を選びます。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまは音楽や美術に造詣の深い方が多く、演奏後には津軽笛について「どういう構造になっているのですか?」などのご質問をいただくこともあり、演奏にも力が入ります。
津軽笛の音色を国内外へ伝えたい
- 津軽笛は青森県津軽地方に伝わる横笛で、他の笛に比べて音が大きく響くのが特徴です。青森市や弘前市、五所川原市のねぷた(ねぶた)まつりをはじめ、津軽地方の祭事には欠かせない笛です。私は9歳から本格的に津軽笛を習い始め、高校3年のときにコンテストで優勝してから以来、ずっと津軽笛奏者として歩んできました。学生時代、祭囃子として津軽笛を吹く友人が多く、吹けることが当たり前すぎて津軽笛は楽器として見向きもされませんでした。しかし、当時から津軽地方の伝統芸能を盛り上げたいとの気持ちが強く、それが活動の源泉になっています。近年は国内外で多くの人に津軽笛に親しんでもらえるようにイベントを開催したり教室を開いたりしています。2019年秋にニューヨークのカーネギーホールのステージに立ったときは、やっとここまできたと心が震えました。
4年分の想いを新曲にたっぷり込めて
弘前駅のホームで私の演奏を聴いているうちに、笛の音色につられて少しずつリズムに乗ったり、「最高!」と声をかけてくださったりするお客さまの姿を見ると、津軽笛を通して心が通じ合えた、と嬉しくなります。この気持ちを大切にして、これからも心を込めて津軽笛の音でお客さまの特別な旅を彩っていきたいと思います。
佐藤 ぶん太 [ 文=野村麻里 撮影=小山一成 ]