「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.512020/10/27

JR東日本リネン 埼玉工場 インストラクター 馬場 睦子の想い

洗濯から仕上げまで1枚1枚心を込めて

「TRAIN SUITE 四季島」の車内で使用されている清々しいほど美しいテーブルクロスやベッドカバー。JR東日本リネン埼玉工場では、お客さまに快適に車内でお過ごしいただけるよう、日々試行錯誤を重ねながらリネン類の洗濯から仕上げ、出荷までをトータルで行っている。


高品質なリネンを安定供給

私が勤務している埼玉工場では、主にJR東日本の新幹線や特急列車で使用されている背もたれのカバーや、ホテルやレストランで使われているシーツやテーブルクロスなどのリネンサプライ業務を行っています。リネンサプライは通常のクリーニングとは異なり、洗って乾燥させるだけではなく、納品先のご要望に応じてリネン類の貸し出しや在庫管理まで一貫して請け負うことをいいます。
2017年から私たちは、「TRAIN SUITE 四季島」の車内で使用されているリネン類を担当させていただいております。ひと口でリネン類と言っても、客室でご使用いただくシーツや布団カバー、枕カバーなどのベッドリネン、浴衣やバスタオル、さらにテーブルクロスやシェフのコックコートなど多岐にわたります。
私は2003年に入社し、2017年からは新人社員の指導にあたるインストラクターとして作業マニュアルの作成や人員配置などを担当しています。とりわけ「TRAIN SUITE 四季島」はお客さまが宿泊される特別な列車ですので、より快適なリネンのご提供をしなくてはなりません。そこでマニュアルを通じて作業の勘どころを詳しくメンバーに伝えることで見えないところまでの徹底した洗浄、シワが残らないプレスなどが可能になりました。現在は4~5人で担当しておりますが、メンバー全員が高い意識を持って業務にあたってくれるので大変頼もしく感じております。


パリッと美しく仕上げるために

「TRAIN SUITE 四季島」で使用されているリネン類は、長年リネン類に関わってきた私から見ても極上の逸品揃いです。例えばデュベ仕様のベッドカバーは1本の繊維が4~5cmと長い海島綿を使用していますので、滑らかで肌触りがいい。しかしその分、デリケートな素材ですので、当初は通常の方法でローラーに通しておりましたが、生地が滑ってしまい、シワができやすいという難点がありました。そこでカバーの両端を2人で持って、カバーの間に空気を入れながらローラーにかけたらどうかと試してみたところ、きれいにプレスできるようになりました。
一度できたシワは再度ローラーにかけてもきれいに伸びません。そうなると翌日にもう一度洗ってからプレスするしかなく、仕上がりに余分に日数がかかってしまうのです。人海戦術も駆使しながらの作業になりますが、ピーンときれいにプレスできたときはメンバーも達成感があり、私も指導の成果が実ったと感じます。


存分にお寛ぎいただくために

「TRAIN SUITE 四季島」の運行開始前に車内を見学する機会がありました。車両のデザインも内装もとても美しいし、こんな素敵な列車で使われるリネンなのだから、それに見合ったものを納品しなくてはと気持ちが引き締まりました。
その後も工場のスタッフが順次見学に伺っていますが、自分たちが仕上げたテーブルクロスやベッドのリネン類が車内にセットされているのを見て、「夢のような空間だった!」と圧倒されて戻ってきます。さらに上野駅のホームでのお客さまのお見送りの様子を見学した際には、「TRAIN SUITE 四季島」にはこんなにも多くの方々が熱い想いを持って携わっているのだと実感いたしました。仕上げている製品の向こうには、お客さまがいらっしゃるのだと常に意識して作業しているのですが、実際にそれが使われている現場に接すると、仕事への想いも一層深まります。
リネンを清潔に仕上げるのはもちろんのこと、いかにお客さまに快適にお過ごしいただけるものを提供できるか、真摯に仕事に向き合っていきたいと思います。布団に入って「このシーツ、肌触りがいいなあ」とお客さまに寛いでいただけたらこれ以上嬉しいことはありません。
JR東日本リネン 埼玉工場
インストラクター 馬場 睦子
[ 文=鈴木伸子 撮影=小山一成 ]