「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.492020/8/25

ルミエールワイナリーレストラン「ゼルコバ」総料理長 広田 昭二の想い

山梨の「香り」を伝えたい

「TRAIN SUITE 四季島」1泊2日コースの1日目の午後に立ち寄るのは、明治18年創業の「ルミエールワイナリー」。
併設のレストラン「ゼルコバ」の広田昭二総料理長は、長年の経験と技を生かし、山梨ならではの素材の良さを引き出すメニューを考案している。お客さまがワインをテイスティングする際、広田が用意するのはカナッペ。山梨の恵みをふんだんに生かした一皿は、ワインと絶妙なハーモニーを奏でる。


旬の旨味と風味をカナッペに仕立てる

私たち「ルミエールワイナリー」では、「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまのために3種類のワインとともに、山梨県で採れた野菜や果物、魚などを使ったカナッペをお楽しみいただきます。その季節の一番美味しい素材をお客さまに味わっていただきたいので、春、夏、秋とメニューを変えています。たとえば、夏はヤマメやイワナの卵が美味しいので、ブラックオリーブとアンチョビのペーストを合わせ、その上にセミドライのトマトをのせます。卵のみずみずしさとペーストの濃厚さ、トマトの甘酸っぱさが絶妙なバランスで組み合わさり、ルミエールのワインと抜群に合います。


その日、手に入る最上の食材で料理をつくる

「ゼルコバ」はオープンして10年になります。私はそれまで東京の「ホテル西洋銀座」の総料理長を務めておりました。東京には世界中の食材が集まり、1年中、欲しいものは何でも手に入ります。しかし、山梨ではそうはいきません。月単位でメニューを組んでも、天候や収穫量などの影響でメニューを変えることもたびたびです。
それでも鮮度の良さは抜群で、桃やぶどう、とうもろこしなどの果物や野菜など、樹で十分に熟したものが手に入ります。これは都会ではなかなかできないことです。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまには最上の食材を使ったカナッペをぜひ召し上がっていただきたく、例えば夏には、白桃にクレソンを添え、長期熟成のワインヴィネガーや黒こしょう、バニラなどで作ったドレッシングをかけたサラダ、とうもろこし本来の甘味を生かしたスペイン風オムレツ、赤ワインに漬け込んだルミエールオリジナルのワインベーコンのローストに、巨峰のレーズンとチーズを合わせたカナッペなどをお出ししています。


リピーターの方にも喜んでいただけるよう、常に工夫を

「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまをお迎えするようになり、驚いたのはリピーターのお客さまが多いことでした。「前回来た時も美味しかったけど、今日も美味しかった」とのお言葉をいただくと、嬉しい反面、同じメニューの料理をお出しするわけにはいかないと、気が引き締まる思いです。以前、マコモダケをサラダにしてお出しした際に「この野菜はなんですか?」と尋ねられたことがございました。マコモダケは中華料理の食材というイメージが強いので、フレンチ、それもサラダで、というのは新鮮に思われたようで、工夫の甲斐がございました。
料理は「香り」が重要です。そのため、メインの野菜や魚、肉に合ったハーブを使ったり、ドレッシングを作るなど、素材の香りを存分に引き出すことを心掛けています。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまには、ワインと料理を通して、山梨ならではの「香り」も伝えられたら嬉しいです。


景色の美しさもワインと共に味わっていただきたい

ワイナリーショップ店長 酒井勇治
「ルミエールワイナリー」では、甲州ぶどう、カベルネ・ソーヴィニヨンなど、赤と白合わせて20品種以上のぶどうを育て、料理に寄り添う、優しい味わいのワインをつくっています。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまには、ルミエールのフラッグシップ・ワイン「シャトールミエール」、石造りの発酵槽を使い、明治時代と同じ醸造法で造った「石蔵和飲(いしぐらわいん)」、そして柑橘系の香りが爽やかな白ワイン「甲州シュールリー」をご用意しました。
この場所は甲府盆地の東に位置し、晴れた日には南アルプスの山々がきれいに見えます。ワインの味が毎年変わるように、自然とは日々変化するものだということを、この地で暮らしていると実感します。「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまにも、その日にしか味わえない風景と味をぜひ楽しんでいただきたい、と思います。そんな想いとともに、ワインを通した最高のおもてなしができればと願っております。
ルミエールワイナリーレストラン「ゼルコバ」
総料理長 広田 昭二
[ 文=野村麻里 撮影=小山一成 ]