「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.472020/7/8

TRAIN SUITE 四季島シェフパティシエ 根田 章一の想い

フルーツを通して、皆さまの想いをつなげる最上のデザートを

「TRAIN SUITE四季島」の旅の大きな楽しみのひとつが食後のデザート。
東日本地域の四季折々のフルーツをふんだんに使った鮮やかな一皿は、華やいだ旅の甘い記憶として、お客さまの心に長く残るものになるだろう。
手掛けるのは「TRAIN SUITE 四季島」専属のシェフパティシエ。各地の生産者が丹精込めて生み出した極上のフルーツを通して、想いをつなげる最上のデザートづくりを追求する。


シンプルに、丁寧に、美味しいデザートを

「TRAIN SUITE 四季島」に携わるようになってから、この列車にはどのようなデザートがよいのだろうか、と考え続けました。試行錯誤を繰り返すうちに辿りついたのが、“シンプルに、丁寧に、美味しいデザートを”という答えでした。
お客さまはフルコースのお食事の最後にデザートを召し上がるので、お腹に負担がかかるようなこってりしたものは向かないと思います。また車内では、数多くの種類は準備できないという制約がありますので、すべてのお客さまが楽しめる一皿をつくらなければなりません。そこで、まず事前にアレルギーの有無をお聞きしたうえで、できるだけ身体に負担がかからない、シンプルなデザートをつくること、自然のままのおいしさを感じていただけるデザートづくりに行きつきました。


東日本各地の季節や風土がつまった、多彩な食材の力

私はこれまでホテルのレストランなどで仕事をしてきました。その間、東日本各地の生産者の方や地元の方との交流を通じ、その土地ならではの美味しい食材がまだまだたくさんあることを知りました。また近年は、各地の市場や農産物展示会などでも、多彩なフルーツの品種との新たな出会いがありました。これらの経験は、パティシエ冥利に尽きますし、ぜひこの機会にそれら豊かな食材の力をメニューに生かしていきたいと思います。
現在、8月下旬の運行再開に向けて、福島県会津地方の牛乳や卵を使った、ちょっと固めの懐かしい感じのするプリンを試作しているところです。また、福島県の桃とチーズを合わせた新作デザートも準備中です。さらに秋には、秋田県仙北市付近で江戸時代より栽培されてきた西明寺(さいみょうじ)栗を使いたいと考えています。赤ちゃんの握りこぶしほどの大粒の栗は、稀少性が高く、食べ応えも十分。ぜひお客さまに味わっていただきたいです。


デザートを通じて、特別な列車の旅の絆を深めたい

「TRAIN SUITE 四季島」は特別な列車です。2019年にこの列車での仕事を打診されたときは、「TRAIN SUITE 四季島」にふさわしい仕事ができるだろうかと、喜びよりもプレッシャーのほうが大きかったです。また車内での作業はレストランの厨房とは状況が大きく異なります。料理をするときは複数のシェフやパティシエが行ったり来たりするので、ある程度のスペースが必要ですが、車内は通路の幅にも制限があり、また走行時の揺れもあるので、崩れやすいデザートは避けるようにするなどの工夫が必要です。 準備にあたって何度か試験運転にも乗車したのですが、そのとき、列車に向かって沿線の方々が手を振ってくださる姿を見て、本当に感激しました。「TRAIN SUITE 四季島」という列車を愛し、誇りにしてくださる方がこんなにも多いことを改めて知りました。皆さまのご期待に応える仕事をしなければならないと、身も心も引き締まる思いです。
お客さまは、何ヵ月も前からこの旅を楽しみにされています。そして、東日本の生産者の方々がその土地の個性を生かし、丹精込めて生み出した、最上のフルーツがあります。それらの思いをつないだデザートをお客さまに味わっていただく。その体験を契機として、沿線各地の風土や歴史についても、お客さまに知っていただける機会になればと思います。
デザートづくりを通して、私なりに、そんな皆さまの思いや絆をより深めていくお手伝いができればと願っています。


根田章一(こんだ・しょういち)
洋菓子メーカーに勤務後、1990年、パティシエとしてホテルエドモントに入社。2016年、ホテルメトロポリタン丸の内「TENQOO」シェフパティシエに。2019年、「TRAIN SUITE 四季島」シェフパティシエに就任。

「お食事を楽しんでいただくためにも、ぜひ万全の体調でいらしてください」。
TRAIN SUITE 四季島シェフパティシエ
根田 章一
[ 文=鈴木伸子 撮影=小山一成 ]