「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.442020/4/28
お客さまとの触れ合いから生まれる
特別な列車ならではの特別な思い出
「TRAIN SUITE 四季島」専属の車掌として
- 「TRAIN SUITE 四季島」に乗務する車掌は現在12名おり、全員が「TRAIN SUITE 四季島車掌区」に所属しています。この車掌区は「TRAIN SUITE 四季島」が運行を始めた2017年5月の半年ほど前、2016年秋に発足しました。
JR東日本では通常、車掌と運転士は一定のエリアの中で乗務を行っています。そしてローテーションにより担当する列車が日々変わります。例えば東海道線を担当する部署では今日は普通通勤電車、明日は特急踊り子を担当するといった具合です。一方私たち「TRAIN SUITE 四季島車掌区」の車掌は「TRAIN SUITE 四季島」だけの乗務にあたり、JR北海道管内を除くすべての路線の乗務を行います。
そして2人の車掌が上野駅のご出発からご到着まで、お客さまとご一緒します。安全運行はもちろんのこと、お客さまが快適にお過ごしいただける環境づくりにも心を配ります。さらに、車窓の景色のご説明に加え、列車に向かって手を振ってくださる方がいらっしゃれば、「右側に手を振って迎えてくださる方がおられます」など、その場に応じたアナウンスを行い、鉄道の旅ならではの楽しさを感じていただけるようにしています。
車掌全員で考え続けた「TRAIN SUITE 四季島」ならではのおもてなし
その日からは毎日毎日、頭の中は「TRAIN SUITE 四季島」のことでいっぱいでした。発足当時は車掌全員で「新しいおもてなしの形でこれまでにない車内でのサービスを作り上げるにはどうしたらよいか」と議論を重ねました。しかし、なかなか答えが見つかるものでもありません。皆で悶々としたことを覚えています。しかし、一つだけ車掌全員が共通して考えていたことがありました。それは「積極的にお客さまとお話をするということ」でした。
私たち車掌との会話で列車の旅をより楽しんでいただければ
- 「TRAIN SUITE 四季島」の車掌はお客さま一人ひとりのお好みに合わせたおもてなしをするため、乗務の前はもとより、旅の途中でも「お食事の反応はどうだったのか」「どのようなご趣味をお持ちなのか」など細かい質問を車内外でサービスにあたるトレインクルーに投げかけ、共有するようにしました。
ただやはり、運行当初は試行錯誤の繰り返しでした。トレインクルーたちは接客のプロフェッショナル。それに対し、私たち車掌は接客のプロではないので、慣れない接客が「TRAIN SUITE 四季島」全体のおもてなしの足を引っ張っているのではないかと、思い悩むこともありました。
クルーの教育係でもあるゼネラルマネージャーにそんな心のうちを打ち明けたところ、「お客さまには、車掌一人ひとりの楽しんでいただこうという“まごころ”が十分伝わっていますよ」と励まされ、その後お客さまから「車掌さんと話ができて楽しかった」というお声をたくさんいただいていることを知りました。私たちの悩みは吹き飛び、お客さまと積極的にお話をするというおもてなしのかたちを続けていく確信を持つことができたのです。
“特別な”列車で“特別な”旅を楽しんでいただくために
あるお客さまは、大病を患われて大きな手術をされた時に1年後の「TRAIN SUITE 四季島」でのご旅行が決まり、主治医には旅行を控えるべきだと言われながらも、この列車に乗ることを目標に治療を続けた結果、その想いがかない、元気なお姿で、奥さまとご一緒にご乗車されました。「森さんとお話しがしたい」と早朝の展望車内でそのお客さまと2人だけでこのお話を伺ったときには、涙が溢れて止まりませんでした。この列車に乗るためにそんなご苦難を克服された方が目の前にいらっしゃる。そのような大事な列車の運行に携わっているのだと思うと、本当に胸が熱くなりました。
2020年春、「TRAIN SUITE 四季島」は運行3周年を迎えます。私たち車掌は、改めて“変えていくべきこと、変えてはならないこと”を改めて意識しなければならないと思っています。お客さまにとっての特別なおもてなしとは何か、そして、地域の皆さまに元気になっていただけるような列車であり続けるために、これからも試行錯誤を重ねながらもっともっとよいかたちに変えていかねばなりません。一方で、「TRAIN SUITE 四季島」がお客さまにとって特別な列車であるという軸は変えてはなりません。お客さまお一人おひとりのお気持ちに寄り添うおもてなしを何よりも大切にしながら、これからも乗務してまいります。
副区長 森 大祐 [ 文=鈴木伸子 撮影=小山一成、的野弘路 ]