「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.432020/3/25
「栃木のテロワール(風土)が詰まったフレンチを」。
故郷への想いを込めた、究極の味のおもてなし
その車中で供されるフレンチは、日本のテロワール(風土)・フレンチのパイオニア、音羽和紀シェフによるもの。
フランスのミシュラン三つ星の巨匠アラン・シャペルの下で日本人として初めて修業した音羽。地元の食材を何より大切にするシャペルの姿勢に心を打たれ、帰国後、40年にわたり、故郷・栃木への想いが詰まった、最高のフレンチを発信し続けている。
栃木産の食材を主役にした一皿に。
親子三人の発想と想いを込めて
- 「TRAIN SUITE 四季島」の車内でお出ししている料理では、栃木産の食材をできる限り用いて地元にしかない味を表現しています。栃木は食材の宝庫なんです。とちぎ和牛やスナップえんどう、カリフラワー、カブなどの野菜、県内で品種改良されたヤシオマスなど、さまざまな種類の食材が季節ごとに揃います。
「TRAIN SUITE 四季島」では、「オトワ三兄弟」と称して(笑)、私と、私の息子の長男・元、次男・創の三人で料理の準備と車内での調理に臨んでいます。前日に仕込みを行うのが長男、当日列車に乗り込み、調理を担当するのが私と次男です。常に三人で話し合いながら、季節ごとにメニューを変え、2017年の運行開始から親子三人で常に協力しあってお客さまにお出しする料理をつくってきました。
師・シャペルとフランスのミオネー村の人々に教わった
地元の味を大切にすること
また、シャペルの店があるリヨン郊外のミオネー村は、なんてことのない田舎の村なのですが、そこに住む人びとが、自分たちの故郷・ミオネーの空気や風や水、そこで暮らしていることに心から誇りを持っていることに感動しました。私も自分の故郷こそを、これからの自分の拠点としたい、日本に帰ったら、やはり故郷・宇都宮で店を持ちたいと思うようになりました。
帰国した1980年頃は、フランスで修業してきた料理人がまだまだ数少ない時代でした。そのうえ、都会でもない、栃木に店を構えるということですから、周りからは「なぜ宇都宮で店を開くのか?」とずいぶん言われました。しかし当時も、そして今も、自分の判断は正しかったと信じています。
「食の外交官」として故郷へ恩返し。
ご乗車される1000人ものお客さまに、栃木フレンチを味わっていただく
料理人は料理を作るだけが仕事ではありません。ヨーロッパでは、土地の食材を広めるという役割もレストランが担っています。より多くの方に栃木の食材や、それらを日々生み出している生産者の方々について、知っていただきたい。そのために私は、「栃木の食の外交官」として栃木にしかない、栃木ならでは、というものを伝えていきたいと考えています。
「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまに、心を込めて、栃木の味でおもてなしをしたい。それが私を育ててくれた故郷・栃木への心からの恩返しだと思っています。
オーナーシェフ 音羽 和紀 [ 文=鈴木伸子 撮影=的野弘路 ]