「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.402019/12/23

弘前「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」シェフ 笹森 通彰の想い

野菜・ハーブからハム、チーズ、ワインまで、食材は自ら育て、料理する。
食のカンパリズモ(郷土愛)でもてなす、最高のイタリアン。

「TRAIN SUITE 四季島」冬の2泊3日コース、2日目の昼食を担当する「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」笹森通彰シェフ。
自らが育てた弘前の多彩な食材を用いた絶品の料理と自家醸造ワイン。カンパリズモ(郷土愛)の精神に基づいた最高のイタリアンには、弘前の風土の美味しいハーモニーが奏でられている。

自家農園で育てる、野菜や果物、ワイン、チーズ、ハム

弘前城近くのわたしの店から車で15分ほどのところに自家農園があります。ここではお客さまに召し上がっていただく、さまざまな食材を栽培しています。ズッキーニ、アスパラガス、小松菜や水菜、春菊などのサラダ野菜。バジル、フェンネルなどのハーブ類や食用花。それから、クルミやアーモンド、梨、イチジク、サクランボ、柿などの果樹もあります。ここで採れたものは、本当に「採れたて」ですから、新鮮で味がすごく濃いんですよ。農園の近くには、岩木山を望むブドウ畑もあって、イタリアのネッビオーロという品種をメインに、シャルドネやメルローなどを育てています。秋にはスタッフ総出で収穫して、赤、白のワインを自家醸造しています。 チーズも地元産の牛乳を使ってモツァレラ、ブッラータのほか、白カビタイプ、ウォッシュタイプ、ハードタイプなど、7、8種類作っています。そのほか生ハムやソーセージも自家製です。

イタリア修業時代に学んだ、「土地の味」の豊かさ

イタリアでの修業時代、各地方のレストランを食べ歩きながら、ワイナリーの見学、友人の家庭でのもてなしなどを通して、地方料理の豊かさを存分に味わいました。弘前に帰ってきて、そんな「土地の味」を自分でも実現したいと思い、まずは食材から自分で作るようになりました。
「TRAIN SUITE 四季島」のお食事は、2017年の12月から担当し、今年で3年目になります。弘前城近くの藤田記念庭園内にある大正時代に建てられた洋館で、前菜、パスタ、魚料理、デザートの4品のコースを召し上がっていただきます。ワインは自家製のネッビオーロの赤ワインをお出ししていますが、メインの魚料理「キンキの鱗焼き」は脂がのっているので、とてもよく合うと好評をいただいております。
ほかにも青森の黒ニンニクを使ったパスタや、わたしの自宅の庭でとれた柿を“あんぽ柿”にして生ハムと合わせた品などもお出ししています。柿の木は、わたしが小学校に入学した記念に植えたもので、収穫した実を父が“あんぽ柿”にしています。濃厚な甘さは、生ハムと絶好の相性です。
技術を誇示するような料理ではなく、まず「絶対においしいもの」をストレートにお出しするようにしています。何よりもこの土地が育んだ味の魅力をお伝えしたいという想いを込めています。

弘前の「食のカンパリズモ」でお迎えしたい

「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまは、国内や海外で、さまざまな豊かな食の体験を重ねている方ばかりでしょう。そんな方々から料理やワインへのお褒めの言葉をいただくと、嬉しさもひとしおです。弘前は本州の北端に近い場所ですが、水や土壌が本当に豊かで、その恵みは特別です。イタリアには、カンパリズモ(郷土愛)といって、生まれ育った故郷をとても大切にする言葉があります。わたしなりの“食のカンパリズモ”で、「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまをお迎えし、これからも皆さまに「弘前の記憶」として残る料理を召し上がっていただければと思っています。
弘前「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ」シェフ 笹森 通彰 [ 文=鈴木伸子 撮影=栗原論 ]