連載コラム
TRAIN SUITE
四季島を
支える想い

2019/08/29

Vol.36:「TRAIN SUITE 四季島」車掌

阿部 昭博(JR北海道函館運輸所所属)の想い

北海道の雄大な魅力を楽しんでいただく、列車の旅の“名プロデューサー”。

「TRAIN SUITE 四季島」3泊4日コースの2日目から3日目にかけて、列車は北海道に入り、函館、登別などを訪ねる。
その列車内で、車窓風景の見どころや、走行ルートなどの細かな情報をご案内しているのは、地元・JR北海道の車掌である。
心ゆくまで北の大地をお楽しみいただきたい、という強い想いを胸に、北海道の魅力を知り尽くすベテラン車掌が、お客さまに寄り添う。

青森・蟹田駅から、青函トンネルを経て北海道内へ

「TRAIN SUITE 四季島」3泊4日コースの旅のルートには、函館や登別など、JR北海道の区間が含まれておりますが、その運転や車掌業務は、私どもJR北海道の乗務員が担当しております。
旅の初日、列車は東京・上野駅を出発し、深夜には青森県内の蟹田駅に到着します。ここで、運転士、車掌がJR東日本からJR北海道に交代いたします。JR北海道では7名の車掌が「TRAIN SUITE 四季島」に乗務しております。
私どもが担当している北海道の乗務区間は大きく分けて3つあります。

1つ目は、蟹田駅から青函トンネルを通過し、翌朝に函館駅に着くまで。2つ目は、お客さまが昼頃に再び函館駅からご乗車され、その日のご宿泊先の最寄駅の伊達紋別駅または登別駅、その翌朝、東室蘭駅または洞爺駅でお客さまがご乗車されて、新函館北斗駅まで。そして3つ目は再び青函トンネルを通って青森県内へというルートになります。
各乗務区間で2名の車掌が交代で担当しております。

青函トンネル通過は旅の大きなハイライト

旅の2日目の明け方、早朝4時から5時頃、列車は青函トンネルを通過します。ここは本州から北の大地・北海道へと渡る節目になりますが、ここを旅の目的の一つとして、早起きをして展望車にいらっしゃるお客さまがかなりいらっしゃいます。
その期待にお応えしたいと、私どもも展望室でお客さまをお迎えして、トンネルの概要や見どころなどをお話させていただいております。
往路は早朝なので、貨物列車が比較的多く走行している時間帯です。トンネル内では貨物列車ともすれ違うので、窓の大きい展望車から貨物列車を間近に感じる迫力を味わえるのも魅力です。
また復路では昼間に青函トンネルを通過しますので、こちらでは「TRAIN SUITE 四季島」と北海道新幹線がすれ違うという、ほかでは味わえない一瞬も体験できます。

道内では、函館本線、室蘭本線のルートを走行します。沿線には、季節の花や紅葉が美しい大沼公園や、雄大な駒ケ岳、絶景が続く内浦湾の風景など、車窓から圧倒的な大自然を体感できる景勝地が多く、まさに北海道の列車の旅の大きな魅力になっています。また室蘭本線には、“秘境駅”として知られる小幌駅という、山と断崖絶壁に囲まれた小さな駅もありまして、鉄道ファンのお客さまにも注目の駅もございます。
そんな数々の見どころを通過する時は、なるべくゆっくりとした速度でと、運転士やクルーにも伝え、沿線の見どころを描いた私なりの手作りのイラストガイドなどもお見せして、お客さまに楽しんでいただけるようにご案内いたしております。

お客さまや沿線の方々とのふれあい

函館に生まれ育った私は、1980年に旧国鉄に入社、当初は貨物列車の連結を担当しておりましたが、87年に車掌に転身し、普通列車に乗務後、特急列車を担当するようになりました。今年で車掌になって32年になります。
「TRAIN SUITE 四季島」の車掌は最初の運行から務めさせていただいておりまして、乗務し始めてもう2年以上になります。その間、お客さまからお手紙や写真を送っていただいたり、沿線の方々との交流が深まったりと、車掌冥利に尽きる、本当に嬉しい出来事もございました。
通常の列車では、お客さまは車掌と必要以上に会話されることはあまりないかもしれません。しかし「TRAIN SUITE 四季島」の車掌は、お客さまとのコミュニケーションと、列車の旅の演出という役割をより深く担っています。また、そんなお客さまとの交流が、私自身、日々大きな励みになっております。
私ども「TRAIN SUITE 四季島」の北海道区間を担当する者としては、何より北海道の魅力をお伝えするのが大きな使命です。沿線の風景でも、食の感動でも、地元の方との交流でも、お客さまが何かひとつ北海道からお持ち帰りいただきたい、という想いでおります。「TRAIN SUITE 四季島」ならではの北海道の旅の思い出のお手伝いを、微力ながら務めさせていただければと願っております。

「TRAIN SUITE 四季島」車掌 阿部 昭博(JR北海道函館運輸所所属)
[ 文=鈴木伸子 撮影=栗原論 ]