「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い

Vol.332019/05/27

「TRAIN SUITE 四季島」運転士 山崎 篤史(JR東日本 田端運転所所属)の想い

安全で快適な“列車の旅”をつなぐ、プロの仕事。

「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまを、安全かつ快適に旅先へと運ぶ「運転士」というミッション。
キャリアの花形であることは、それだけの重責を担うということ。20年近いキャリアを持つ山崎篤史が、長年培ってきた多彩な経験とプロとしての誇り。
そして、「TRAIN SUITE 四季島」の運転士という特別の仕事への熱い思い――。

始発駅・上野からの運転を担当

田端運転所に所属する私が「TRAIN SUITE 四季島」で担当しているのは、3泊4日コースの上野~宇都宮間の運転と、1泊2日コースの上野~八王子間の運転のほか、2泊3日コースの上野~黒磯間と東日本の旬コースで担当を指定された区間、車庫である尾久車両センターでの車両の入換業務です。
3泊4日コースでは列車は北海道エリアまで行きますが、青函トンネルの手前の青森県蟹田駅で、JR東日本の乗務員はJR北海道の乗務員と交代します。
信号機やカーブ、勾配や制限速度などを厳密に把握しなければならないうえ、長距離の運転では、一人の運転士が連続して運転できる時間も定められています。「TRAIN SUITE 四季島」は、数十名の運転士が線区ごとに交代して、リレーのように、皆で行程をつないでいきます。

電車、電気機関車、気動車とキャリアを積んで

  • 私は平成10年の入社になります。当初、大井工場(現・東京総合車両センター)にて車両メンテナンス業務を担当後、翌年には蒲田車掌区(現・大田運輸区)で車掌として京浜東北線に乗務。その後、平成13年に電車の運転免許を取得して蒲田電車区(現・大田運輸区)の運転士として、京浜東北線を運転するようになりました。
    電車の運転士になるのは子どもの頃からの大きな夢でした。初めて運転席に座って電車を動かしたときの感動は、今も忘れられません。
    平成20年には田端運転所に異動し、ブルートレインの電気機関車の運転を担当しました。当時は上野から北海道・札幌まで運行する「北斗星」と「カシオペア」が運行されており、これら電気機関車が牽引するブルートレインには特別な憧れがありました。田端運転所では電気機関車の運転資格を取り、さらに宇都宮運転所で気動車の運転免許を取得しました。
  • そして平成28年11月、尾久車両センターで「TRAIN SUITE 四季島」の入換業務を担当することになりました。
    初めてこの車両を運転したときの感動は忘れられません。不思議な魅力を持った車両でした。電車でありながら、搭載したエンジンで発電した電気でモーターを回して気動車として走行することもできる、日本で初めての制御方式が採用されており、後ろでエンジンが回っているのにモーターの音がするし、電車のようにスムーズに加速していく……。運転していて、まったく初めての特別な体験でした。

「TRAIN SUITE 四季島」ならではのおもてなしの運転技術

平成30年5月から「TRAIN SUITE 四季島」の本線運転を担当することになり、ほぼ1年が経過しました。乗務のたびに、やはり特別な緊張感があります。
「TRAIN SUITE 四季島」は、車窓の風景や車内での料理など、なにより“旅”自体を楽しんでいただく列車です。出発前の車掌との打ち合わせでは、運行に関わる事項の他、「TRAIN SUITE 四季島」のマザーベースである尾久車両センター、桜やあじさいの季節には飛鳥山公園、そして富士山や筑波山等、ゆっくり走行する地点の確認もします。お客さまには、流れる車窓からぜひ特別なシーンを体験していただきたい。一方で、もちろんきちんと定刻に着けるように、細かく運行の調整をしていきます。
「TRAIN SUITE 四季島」の大きく開かれた前面展望車からのパノラマは、本当に素晴らしいです。3泊4日コースの私の担当区間では、富士山、筑波山が見どころですが、ほかにも2泊3日コースでは男体山、女峰山や那須の連山の眺めもご覧いただきたい。また1泊2日コースでは、中央線の立川駅付近を過ぎて次第に山々が姿を現わす、ダイナミックな変化なども、ぜひ展望車で味わっていただければと思います。

田端運転所が背負う、特別な使命

田端運転所は、本線の運転に加え、車両が尾久車両センターから、旅の間、不具合なく運行できる状態かを最終確認するという任務も担っています。田端運転所の運転士は、列車を車両基地から出発させるときに、運転士が車両の状態を確認する点検作業である出区点検から携わり、万全なコンディションの車両を次の運転士に引き継いでいく責任があります。
「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまの期待にお応えしたいという、熱い思いのもと、スタッフ全員で最高のクルーズを創り出す。その一体感をしっかりと支えて、お客さまの旅をつないでいくのが、私たち運転士のミッションだと思っています。
「TRAIN SUITE 四季島」運転士 山崎 篤史(JR東日本 田端運転所所属) [ 文=鈴木伸子 撮影=的野弘路 ]