「TRAIN SUITE 四季島」を支える想い
Vol.312019/03/15
専務取締役 岩舘 尚
料理長 篠原 宏達
の想い
岩手の風土に触れていただける朝食の時間を「TRAIN SUITE 四季島」のお客さまに。
創業者である先々代の、芸妓時代の名前をそのまま屋号とし、今年(2019年)、創業64年目を迎える料亭である。
「岩手の良いものをすべて、お客さまにお届けしたい」という気概を持って、早朝の盛岡から青森まで、しばし車中の人となる。
岩手の魅力をお盆いっぱいにのせて
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岩舘早苗(以下、女将):「TRAIN SUITE 四季島」で朝食をお出しするにあたり、私たちが心がけているのは、岩手の魅力をお客さまにお届けする、ということです。岩手はお米も美味しく、海の幸、山の幸にも恵まれたところ。その良さをぜひ知っていただきたい、という想いで取り組んでいます。 -
篠原:使う食材は地元、岩手のもの。なめた鰈(がれい)、鮑(あわび)、どんこなど、旬の魚介は、長年つきあいのある業者から届きます。人参とごぼうを紫蘇(しそ)の葉で巻いた「みの虫南蛮」という、遠野の伝統的な漬物も岩手らしい一品です。自ら産地に足を運んで、選んだ食材もあります。玉子焼の卵は、殻も卵白も青みがかっているアローカナ種。普通の鶏卵よりも味がいいと思います。なめた鰈の煮付に使う醤油は、2年熟成させた最高級品。もちろん岩手のものです。 -
岩舘:米は、2017年に発表されたばかりの岩手県オリジナルの高級品種「金色(こんじき)の風」をご用意しています。もっちりとしていて甘く、冷めても甘みが強いので、おにぎりにしても美味しくいただけるお米です。
空間に合わせ、軽さ、使いやすさを吟味した器たち
- 女将:料理を盛りつける器も、お盆からコースターに使った布製品に至るまで、岩手のもので揃えました。朝食を召し上がっていただくテーブルのサイズを考えて作った特注品です。食器は重いと扱いづらいので、飯椀には浄法寺(じょうぼうじ)塗の漆器を選びました。ナプキン代わりにお配りするひざ掛けの文字は、宮澤賢治の詩の一節を、盛岡の書家、吉田晨風(しんぷう)先生に書いていただいたもの。私も岩手伝統の染め物、紫根染(しこんぞめ)の上っ張りを着て、皆さまのテーブルを回っています。
- 岩舘:早朝4時半に盛岡駅へ行き「TRAIN SUITE 四季島」に乗り込みます。クルーの方と一緒に朝食をお出しし、青森で私たちは下車します。車中では、クルーや車掌など多くの方と一緒に働いていますが、皆、仲が良く、楽しいです。笑顔を絶やさず、使命感をもって業務にあたっている皆さんと一緒にお仕事することは、私たちにとっても刺激になります。
- 篠原:列車内である「TRAIN SUITE 四季島」のキッチンと、駒龍の厨房とでは設備の仕様もずいぶん違います。炊飯器もリットル表記なので、慣れるのに少し時間がかかりました。そんななかで新種の「金色の風」を炊くのは、水加減や浸水時間など、最初は試行錯誤でした。けれど今では、米の旨さを十分に引き出せるようになったと思います。柔らかい食感が特徴のお米ですので、年配のお客様にも喜んでいただいています。
再訪を願う、その想いを込めて供する朝食の時間
篠原:この仕事をするにあたり、総料理長の岩崎均シェフから、自分で食材を探したり、産地に足を運んだりするなど、今まで以上に素材や味つけにこだわることを教えていただき、自分にとっても大変勉強になっています。これからも食を通して、岩手、盛岡の良さを皆さまにお伝えしたいと思います。
岩舘:毎回、「また来たいね」と思っていただけるような、思い出に残る時間を過ごしていただきたい、という想いでサービスさせていただいています。私たちにとっては正味3時間強の車中ですが、汁ものなどがこぼれないよう、集中して動き回るせいでしょうか、降車した後もその日は一日、列車に乗っているような感覚が続くんですよ。不思議ですね。